短答問題 憲法「法の支配」

 入門講座受講中の方または受講を終えた方、法学部在学中の方、力試しに問題を解いてみませんか。問題は2016年実施の「予備試験スタンダード短答オープン」からセレクトしています。科目は憲法、テーマは「法の支配」、講座実施時の正答率は83%でした。

[問題]

 「法の支配」の原理に関する次のアからウまでの各記述について,正しいものには○,誤っているものには×を付した場合の組合せを,後記1から8までの中から選びなさい。

ア.「法の支配」は,法による国家権力のコントロールを要求するものであって,法そのものの内容や手続の正当性を要求するものではない。

イ.「法の支配」の具体的形態は国によって必ずしも同じではないが,憲法の最高法規性の観念は,「法の支配」の重要な内容の一つとして考えることができる。

ウ.「法の支配」の特徴の一つとして,それがいかなる政治体制とも結合し得る形式的な観念であることを挙げることができる。

1.ア○ イ○ ウ○

2.ア○ イ○ ウ×

3.ア○ イ× ウ○

4.ア○ イ× ウ×

5.ア× イ○ ウ○

6.ア× イ○ ウ×

7.ア× イ× ウ○

8.ア× イ× ウ×

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[解答]

 正解は6。

 本問は,「法の支配」の原理(専断的な国家権力の支配(人の支配)を排斥し,権力を法で拘束することによって,国民の権利・自由を擁護することを目的とする原理のこと)に関する知識を問うものである。このような概念的な事柄については,普段の学習では意識的に押さえることが少ないと思われるが,この機会に各記述にある知識については確実に押さえて欲しい。(芦部(憲法)P.13~5。有斐閣憲法ⅠP.25~33。条文・判例スタンダード(1)P.7~9。)

ア.誤り。

 本記述は,「法の支配」が法そのものの内容や手続の正当性を要求するものではないとしている点で,誤っている。「法の支配」は,個人の尊厳を最高の価値と認め,法も国家もそれに仕えるものとみなし,それに基づいて個人の基本的人権を憲法で保障し,法律といえどもこれを侵すことを許さず,しかも法律の定める内容や手続の適正を要求し,そうして,裁判所の権威によってその保障を確保しようとするものである。よって,「法の支配」は,法による国家権力のコントロールのみならず,法そのものの内容や手続の正当性をも要求するものであるといえる。

イ.正しい。

 「法の支配」とは,専断的な国家権力の支配(人の支配)を排斥し,権力を法で拘束することによって,国民の権利・自由を擁護することを目的とする原理であるが,その具体的形態はそれぞれの国によって必ずしも同じではないとされる。しかし,前述のように「法の支配」の目的は,人の支配(人による恣意的・専断的権力の支配)を防止することにあるから,「最高法」あるいは憲法の「最高法規性」の観念は「法の支配」の重要な内容の一つとなると理解されている。したがって,本記述は正しい。

ウ.誤り。

 本記述は,「法の支配」がいかなる政治体制とも結合し得る形式的な観念であるとしている点で,誤っている。「法の支配」においては,制定法優越の原則が国会主権の原理と結びついており,市民階級が立法過程において重要な役割を演じているとされる。そして,このことは国民の権利・自由を制約する法律の内容は国民自身が決定する建前になっていることを意味し,その点で,「法の支配」は民主主義と結合するものであると考えられている。よって,「法の支配」はいかなる政治体制とも結合し得る形式的な観念ではない。なお,戦前のドイツの「法治国家」の観念は,民主的な政治制度と結びついて構成されたものではなく,国家作用が行われる形式又は手続を示すものにすぎない。したがって,いかなる政治体制とも結合し得る形式的な観念であったとされる。

 以上により,正しい組合せは「ア× イ○ ウ×」であり,したがって,正解は肢6となる。