短答問題 民法「権利能力・意思表示」

 入門講座受講中の方または受講を終えた方、法学部在学中の方、力試しに問題を解いてみませんか。問題は2016年実施の「予備試験スタンダード短答オープン」からセレクトしています。科目は民法、テーマは「権利能力・意思表示」、講座実施時の正答率は83%でした。

[問題]

 権利能力及び意思能力に関する次の1から4までの各記述のうち,誤っているものはどれか。

1.相続及び遺贈について,胎児は,既に生まれたものとみなされる。

2.判例によれば,胎児の母親が胎児を代理してなした和解契約は,胎児に対して,その効力を有する。

3.判例によれば,意思能力を有していない成年者が手形を振り出した行為は,その行為当時,その成年者が後見開始の審判を受けていなかったとしても,無効である。

4.外国人は,私権を享有するが,法令又は条約の規定により制限されることがある。

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[解答]

 正解は2。

 本問は,権利能力・意思能力に関する基本的な条文・判例知識を問うものである。自然人の権利能力の始期は「出生」(民法3条1項)の時であるが,例外的に,不法行為に基づく損害賠償請求権,相続及び遺贈については,胎児は既に生まれたものとみなされる(肢1)。また,自然人の権利能力の終期は死亡のときであるが,失踪宣告(民法30条~32条)の手続を経ることにより,従来の住所を中心とする私法上の法律関係は死亡したのと同じ扱いがなされる。本問と併せて確認しておいて欲しい。

1.正しい。

 本記述は,民法886条1項,民法965条により正しい。私権の享有は,出生に始まる(民法3条1項)。すなわち,出生以前の胎児は権利能力を持たないことが原則である。もっとも,不法行為に基づく損害賠償請求権(民法721条),相続(民法886条1項),及び遺贈(民法965条)については,胎児は既に生まれたものとみなされる。これらの場合,胎児は権利能力を持たないという原則を貫くと,例えば,出生前にその父が死亡した場合には,その胎児は父の遺産を相続することはできず,また,父が他人の不法行為によって死亡した場合にも,胎児は加害者に対して損害賠償を請求することができないことになってしまうというように,出生の時期が遅いか早いかで不公平な結果となるおそれがある。そのため,民法は,胎児の利益を図って,不法行為に基づく損害賠償請求権,相続及び遺贈については,民法3条1項の例外を個別的に認めたものである。(内田ⅠP.92~3。川井(1)P.23。条文・判例スタンダード(3)P.6。)

2.誤り。

 本記述は,胎児の母親が胎児を代理してなした和解契約は,胎児に対して,その効力を有するとしている点で,誤っている。大判昭7.10.6。判例は,母親が胎児を代理してなした和解契約の効力を否定している。判例の結論に賛成する学説は,その理由として,胎児については死産の場合もあり得るし,また,後になって権利関係を紛糾させたり,関係当事者に不測の損害を与えないようにするためには,胎児の段階では権利能力は認めず,生きて生まれた場合に胎児の時に遡って権利能力を取得すると考えるべきであって,このように考えると,胎児中の権利行使は認められず,胎児中に他人が胎児を代理して行為をすることはできないということを挙げている。よって,胎児の損害賠償請求権につき,胎児を代理してなされた和解契約は,胎児に対して効力を有しない。(内田ⅠP.93~4。川井(1)P.23~4。条文・判例スタンダード(3)P.7。)

3.正しい。

 本記述は,大判明38.5.11により正しい。大判明38.5.11(百選Ⅰ5事件)。禁治産宣告(現:後見開始の審判)を受けていない成年者がなした手形振出行為につき,意思無能力を理由とする無効の主張が認められるかについて,判例は,禁治産宣告の前後を問わず,事実上意思能力を有しないときは,その行為は無効であるとしている。その理由として,判例は,法律が制限行為能力者を特定しその行為を取り消すことを許したのは,制限行為能力者の利益を保護するため,意思欠缺の事実を証明することなく,当然取り消すことを可能にしたものであって,制限行為能力者に当たらない者の行為が絶対にその効力を有するという趣旨ではないということを挙げている。(内田ⅠP.103。川井(1)P.22。条文・判例スタンダード(3)P.9。)

4.正しい。

 本記述は,民法3条2項により正しい。民法3条2項。外国人は,法令又は条約の規定により禁止される場合を除き,私権を享有する。これは,法令又は条約の規定により禁止される場合を除いて,原則として平等主義(原則として内外人平等に権利能力を認める立場)に立つことを示した規定である。法令又は条約の規定により制限される場合として,例えば,国家賠償法6条,特許法25条等がある。(内田ⅠP.92。川井(1)P.22。条文・判例スタンダード(3)P.6。)