短答問題 憲法「憲法9条」

 入門講座受講中の方または受講を終えた方、法学部在学中の方、力試しに問題を解いてみませんか。問題は2016年実施の「予備試験スタンダード短答オープン」からセレクトしています。科目は憲法、テーマは「憲法9条」、講座実施時の正答率は90%でした。

[問題]

 憲法第9条に関する次のアからウまでの各記述について,最高裁判所の判例の趣旨に照らして,正しいものには○,誤っているものには×を付した場合の組合せを,後記1から8までの中から選びなさい。

ア.憲法第9条は,戦争を放棄し,戦力の保持を禁止しているが,日本国憲法の平和主義は,無防備,無抵抗を定めたものではない。

イ.憲法第9条は,我が国がその平和と安全を維持するために他国に安全保障を求めることを何ら禁ずるものではない。

ウ.憲法第9条は,私法上の行為の効力を直接規律するものではないから,憲法より下位の法形式による法規の解釈適用に当たって,その指導原理となるものではない。

1.ア○ イ○ ウ○

2.ア○ イ○ ウ×

3.ア○ イ× ウ○

4.ア○ イ× ウ×

5.ア× イ○ ウ○

6.ア× イ○ ウ×

7.ア× イ× ウ○

8.ア× イ× ウ×

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[解答]

 正解は2。

 本問は,旧日米安全保障条約が憲法の平和主義や戦力不保持に反しないかなどが実質的に争われた砂川事件(最大判昭34.12.16,百選Ⅱ169事件,肢ア・イ)と,自衛隊基地の用地買収を巡って自衛隊の合憲性が争われた百里基地訴訟(最判平元.6.20,百選Ⅱ172事件,肢ウ)に関する知識を出題したものである。ともに過去の短答本試験で出題されており,繰り返し出題される可能性もあるので,確実に押さえて欲しい。

ア.正しい。

 本記述は,最大判昭34.12.16により正しい。最大判昭34.12.16(砂川事件,百選Ⅱ169事件)。判例は,駐留米軍と旧日米安全保障条約の憲法9条適合性が実質的に争われた事案において,憲法9条は「いわゆる戦争を放棄し,いわゆる戦力の保持を禁止しているのであるが,しかしもちろんこれによりわが国が主権国として持つ固有の自衛権は何ら否定されたものではなく,わが憲法の平和主義は決して無防備,無抵抗を定めたものではない」としている。(芦部(憲法)P.70。有斐閣憲法ⅠP.71,173,186。条文・判例スタンダード(1)P.22~4。)

イ.正しい。

 本記述は,最大判昭34.12.16により正しい。最大判昭34.12.16(砂川事件,百選Ⅱ169事件)。判例は,「憲法9条は,わが国がその平和と安全を維持するために他国に安全保障を求めることを,何ら禁ずるものではない」としている。その理由として,判例は,「わが国が,自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは,国家固有の権能の行使として当然のことといわなければならない。すなわち,われら日本国民は,憲法9条2項により,同条項にいわゆる戦力は保持しないけれども,これによつて生ずるわが国の防衛力の不足は,これを憲法前文にいわゆる平和を愛好する諸国民の公正と信義に信頼することによつて補ない,もつてわれらの安全と生存を保持しようと決意したのである。そしてそれは,必ずしも原判決のいうように,国際連合の機関である安全保障理事会等の執る軍事的安全措置等に限定されたものではなく,わが国の平和と安全を維持するための安全保障であれば,その目的を達するにふさわしい方式又は手段である限り,国際情勢の実情に即応して適当と認められるものを選ぶことができることはもとよりであ」るということを挙げている。(芦部(憲法)P.70。有斐閣憲法ⅠP.71,173,186。条文・判例スタンダード(1)P.22~4。)

ウ.誤り。

 本記述は,憲法第9条は,私法上の行為の効力を直接規律するものではないから,憲法より下位の法形式による法規の解釈適用に当たって,その指導原理となるものではないとしている点で,誤っている。最判平元.6.20(百里基地訴訟,百選Ⅱ172事件)。判例は,自衛隊基地の用地買収を巡って自衛隊の合憲性が争われた事案において,「憲法9条は,人権規定と同様,国の基本的な法秩序を宣示した規定であるから,憲法より下位の法形式によるすべての法規の解釈適用に当たつて,その指導原理となりうるものであることはいうまでもない」としている。なお,判例は,「憲法9条は,その憲法規範として有する性格上,私法上の行為の効力を直接規律することを目的とした規定ではなく,人権規定と同様,私法上の行為に対しては直接適用されるものではない」としている。(芦部(憲法)P.114。有斐閣憲法ⅠP.155。条文・判例スタンダード(1)P.9,24~6,491,497~9。)

 以上により,正しい組合せは「ア○ イ○ ウ×」であり,したがって,正解は肢2となる。