民法(債権関係)改正
債権法分野を中心とした、120年ぶりとなる民法大改正法案が、2017年4月14日に衆議院を、5月26日に参議院をそれぞれ通過・成立し、6月2日に公布されました。
施行日は、公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日とされており、現段階(10月25日現在)では政令は制定されていません。明確ではありませんが、改正の大きさからみて、各業界に周知徹底する期間を顧慮すると、2020年1月もしくは同年4月に施行されるとする見方が有力です。
司法試験・司法試験予備試験は原則として、試験日に施行されている法令に基づいて出題されます。よって、2018年と2019年の本試験は現行法で、2020年以降の本試験は改正法で出題される可能性が高くなります。しかし、詳細については法務省の発表を待つしかありません。スケジュールが前倒しになる可能性もありますので、受験生の皆さんには、現行法との関連において、必要な範囲・必要な深さで、改正民法の学習を進めておくことをおすすめします。
《追記》2017年11月2日に、2020年の施行を目指して準備を進めていると、法務省の発表がございました。
法務省WEBサイト「民法の一部を改正する法律(債権法改正)について」
民法(債権関係)改正に対応したおすすめの基本書等
1.大村敦志『新基本民法シリーズ』
今回の民法(債権関係)改正の特徴として、判例・学説上確立したルールについて明文化、合理化して、整理し直しているという点があります。
そのため、現行法を一通り勉強した上で、改正法を見ることは非常に有用です。現行法の特色が浮き彫りになり、現行法の理解も、改正法の理解も深まるという相乗効果が期待できます。
また、改正法施行前に実施される各試験は、現行法による出題で実施されますので、これにチャレンジする場合は、現行法を勉強しておく必要があります。
この『新基本民法シリーズ』は、民法の全分野について、現行法と改正法を並行して学ぶことのできる貴重な文献です。
多くの図表が掲載されていて非常に易しい内容となっております。これから民法を学ぼうとする全ての方におすすめです。なお、大村敦志先生は、法制審議会民法(債権関係)部会幹事でした。
大村敦志『新基本民法シリーズ』全8巻(有斐閣)
詳細は下記有斐閣WEBサイト参照
2.中田裕康『契約法』
契約法は民法の最重要分野であり、今回の民法(債権関係)改正においても様々な変更が加えられています。
本書は、この契約法について、現行法と改正法の双方を学ぶことができる貴重な文献です。
本書の著者、中田裕康先生の著作である『債権総論』(岩波書店)は、基本的な考え方から説き起こす、分かりやすくメリハリの利いた表現で、多くの受験生に愛用されておりました。
この『契約法』も、基本的な考え方から、見解の対立点等の法律を学ぶ上で重要な事項について、分かりやすく記述されています。
加えて、改正がなされた点については、なぜ改正がなされたかという点も含めて記述されているため、現行法と改正法を対比しながら学ぶことができます。
契約法の分野に関して、今後受験生に人気の基本書となるでしょう。なお、中田裕康先生は、法制審議会民法(債権関係)部会委員でした。
中田裕康『契約法』(有斐閣,2017年)
定価(本体4,800円+税)
詳細は下記有斐閣WEBサイト参照
3.潮見佳男『民法(全)』
本書の前身である『入門民法(全)』は、多くの受験生に使用されていました。
本書は、この『入門民法(全)』を改正法に沿った形で書き改めたもので(本書はしがき参照。)、改正法をメインにした内容です。
改正法施行後に実施される各試験を目指される方は、本書を使用して勉強されてもよいかと思います。
ただ、本書は、そのコンパクトさ故に、論点や判例の記述が簡潔なところもありますので、上記で紹介している大村敦志先生や中田裕康先生の基本書などを参考書とした上で、本書を試験直前期のまとめ用教材として用いるのがよいと思います(前身の『入門民法(全)』も、まとめ用に用いていた受験生が多いと言われいます。)。
なお、潮見佳男先生は、法制審議会民法(債権関係)部会幹事でした。
潮見佳男『民法(全)』(有斐閣,2017年)
定価(本体4,500円+税)
詳細は有斐閣WEBサイト参照
4.潮見佳男『民法(債権関係)改正法の概要』
今回の民法(債権関係)改正に関する解説書は、数多く出版されていますが、本書は法制審議会民法(債権関係)部会幹事であった潮見佳男先生による、逐条形式の充実した解説書です。多くの実務家が手にとっていると言われています。
上記で紹介している大村敦志先生や中田裕康先生の基本書で学んだ後に、改正法の理解をさらに深めたいという方に最適です。
潮見佳男『民法(債権関係)改正法の概要』(きんざい,2017年)
定価(本体3,200円+税)
詳細は下記きんざいWEBサイト参照
5.山本敬三『民法の基礎から学ぶ 民法改正』
本書は法制審議会民法(債権関係)部会幹事であった山本敬三先生の改正法の解説書で、コンパクトで、かつ、図表を多用して非常に分かりやすい内容となっております。
なぜ改正がなされたか、具体的な改正条文を挙げて、分かりやすく説明しています。また、関連する基本原理にも言及がされているので、改正法の内容が飲み込みやすくなると思います。
上記で紹介している大村敦志先生や中田裕康先生の基本書で学んだ後に、改正法の理解をさらに深めたいという方に最適です。
山本敬三『民法の基礎から学ぶ 民法改正』(岩波書店,2017年)
定価(本体1,200円+税)
詳細は下記岩波書店WEBサイト参照
六法について
平成30年版の六法は、ほとんどのものが民法(債権関係)改正に対応しています。