【連載】基本三法【憲法・民法・刑法】の基礎知識 第3回 民法総則「民法94条2項」

 各科目の学習作法を習得した後に訪れるのは,学部の定期試験です。そこで本連載では,司法試験予備試験及び法科大学院入試対策も兼ねて,憲法・民法・刑法の基本三法の頻出論点に関する基礎知識を紹介させて頂きます。まずは,週2回程度の更新で,答案の書き方のポイント2回,民法総則3回,憲法人権論3回,刑法総論3回を掲載致します。

第3回 民法総則「民法94条2項」

 民法94条1項は,真意がないのに相手方と通じて虚偽の意思表示をした場合,当事者間ではこれに法的拘束力を与える必要がないことから,その意思表示は無効としています。ただし,同条2項で,善意の第三者に対しては無効を対抗できないとして,第三者保護を図っています(民法94条2項の直接適用)。

 そして,上記のように94条2項は,「虚偽の意思表示」に関する規定であり,しかも「通謀」をなすことが条文上要件となっています。にもかかわらず,たとえ虚偽の意思表示でなくても,あるいは通謀がなくても,①虚偽の外観が存在し,②その外観の作出につき本人に帰責性があり,③相手方がその外観を信頼した場合には,取引の安全という94条2項の趣旨が妥当することから,同条項を類推適用して,第三者の保護を図ることとされています(民法94条2項の類推適用)。

 このため,94条2項は,権利外観法理(「ある者が,その責めに帰すべき事由により不実の外形を作り出した場合,その外形を真実であると信じた者を保護すべきである」(佐久間毅『民法の基礎1 総則』(有斐閣,第4版,2018)P.121)という考え方で,表見法理とも呼ばれています。)の現れとされています。

 そして,94条2項の直接適用,類推適用ともに多くの判例が蓄積されており,民法総則における最重要テーマの1つとして,学部の定期試験,司法試験予備試験及び法科大学院入試に出題されやすいと思われます。

 下記で参考文献をお示しした上で,原孝至基礎講座のテキストである『新スタンダードテキスト民法Ⅰ』の該当部分を掲載(PDF)致します。本ブログ読者の皆様の学習にお役立て頂ければ幸いです。

 

【参考文献】

 ・四宮和夫・能見善久『民法総則』(弘文堂,第9版,2018)(出版社HP書籍紹介参照

 本書は,民法総則の代表的な基本書で,旧司法試験以来その利用者が多いことで知られています。民法94条に関しては,本書P.231~243で解説されており,特に94条2項の類推適用の場面を整理したP.237~243は,一読の価値があります。

 ・佐久間毅『民法の基礎1 総則』(有斐閣,第4版,2018)(出版社HP書籍紹介参照

 著者は現司法試験及び予備試験考査委員です。民法94条2項に関しては,本書P.118~143で,具体的な事例をもとに分かり易く解説されております。

 ・沖野眞已ほか編著『民法演習サブノート210問』(弘文堂、2018)(出版社HP書籍紹介参照

 民法94条2項類推適用に関しては,本書P.33~4で具体的な事例に基づいて解説されています。

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原孝至・基礎講座 教材
新スタンダードテキスト民法ⅠP.75~83PDF.pdf
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