
各科目の学習作法を習得した後に訪れるのは,学部の定期試験です。そこで本連載では,司法試験予備試験及び法科大学院入試対策も兼ねて,憲法・民法・刑法の基本三法の頻出論点に関する基礎知識を紹介させて頂きます。まずは,週2回程度の更新で,答案の書き方のポイント2回,民法総則3回,憲法人権論3回,刑法総論3回を掲載致します。
第7回 憲法人権論「インターネット上の表現の自由」
インターネット上の表現の自由(憲法21条)について,芦部信喜『憲法』(岩波書店,第6版・高橋和之補訂,2015)P.188では,「…インターネットは双方向的な情報流通を可能にし,国民に表現者でもありうる可能性を開いてくれた。しかしまた,表現の自由との関連で従来存在しなかった問題も提起するようになってきている。」と問題提起されています。その上で,「インターネット外で許されなかった表現がインターネット上では許されるということは,原則的にはない。しかし,同じ規制でもインターネットの特性から規制の仕方・範囲・程度が異なり異なりうるのではないか。」と指摘されています。なお,芦部・前掲書P.188~9の「インターネット上の表現の自由」は,同書第6版で高橋和之教授により,近時重要性が増している論点として新しく項目を立てて説明が加えられた模様です(下記出版社HP書籍紹介参照)。
そして,本テーマに関しては,わいせつ表現の規制,プライバシー侵害,名誉毀損の表現などが具体的に問題となります。対策としては,芦部・前掲書P.188~9や渋谷秀樹『憲法』(有斐閣,第3版,2017)P.394~5で議論の概要を見たうえで,これらで引用されている判例を検討してみるとよいでしょう。
また,本テーマに関連する近時の判例として,「検索事業者に対し,自己のプライバシーに属する事実を含む記事等が掲載されたウェブサイトのURL並びに当該ウェブサイトの表題及び抜粋を検索結果から削除することを求めることができる場合」(下記裁判所HP裁判例情報掲載判示事項)について判示した,最決平29.1.31(民集71-1-63,平成28年度重判憲法4事件)があります。この判例に関しては,現司法試験及び予備試験考査委員である曽我部真裕教授が解説されており(同「『検索結果削除』で最高裁が判断―表現の自由を尊重,検索事業者の義務は限定的に」新聞研究789号P.56~9),受験に際しては要注意です。
なお,下記で参考文献をお示しした上で,原孝至基礎講座のテキストである『新スタンダードテキスト憲法』の該当部分を掲載(PDF)致します。本ブログ読者の皆様の学習にお役立て頂ければ幸いです。
・渋谷秀樹『憲法』(有斐閣,第3版,2017)(出版社HP書籍紹介参照)
P. 394~5
・最決平29.1.31(民集71-1-63)(裁判所HP裁判例情報参照)
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