【連載】基本三法【憲法・民法・刑法】の基礎知識 第8回 憲法人権論「職業選択の自由」

 各科目の学習作法を習得した後に訪れるのは,学部の定期試験です。そこで本連載では,司法試験予備試験及び法科大学院入試対策も兼ねて,憲法・民法・刑法の基本三法の頻出論点に関する基礎知識を紹介させて頂きます。まずは,週2回程度の更新で,答案の書き方のポイント2回,民法総則3回,憲法人権論3回,刑法総論3回を掲載致します。

第8回 憲法人権論「職業選択の自由」

 職業選択の自由(憲法22条1項)について,芦部信喜『憲法』(岩波書店,第6版・高橋和之補訂,2015)P.224には,「憲法22条1項の保障する職業選択の自由は,自己の従事する職業を決定する自由を意味する。自己の選択した職業を遂行する自由,すなわち営業の自由もそれに含まれる。…職業選択の自由の限界については問題が多い。」と記載されております。

 この職業選択の自由においては,例えば規制の合憲性判定基準が問題となります。従来は,消極的・警察的規制(消極目的規制)の場合は「厳格な合理性」の基準,積極的・政策的規制(積極目的規制)の場合は「明白の原則」を用いるという目的二分論が学説でも広く支持されていました(芦部・前掲書P.226~7)。もっとも,「目的二分論を否定する説も有力化している」(芦部・前掲書P.228)ようです。

 そして,司法試験及び予備試験対策上,この分野で重要な判例は,薬事法違憲判決(最大判昭50.4.30民集29-4-572,百選Ⅰ97事件)かと思われます。この点,現司法試験及び予備試験考査委員である小山剛教授も著書である「『憲法上の権利』の作法」(尚学社,第3版,2016)P.18で「薬事法違憲判決は,職業選択の自由に関する重要判例であるばかりではなく,法律の合憲性を論証する作法を学ぶうえでも重要である」と指摘され,小山・前掲書P.18~9で同判決の法的構成を,同P.19~20で同判決の当てはめを記載しています。そして,同P.20~21で同判決の論理の展開を示しており,職業選択の自由や法律の合憲性を論証する作法を学ぶのに最適です。是非参考にしてみて下さい。

 なお,下記で参考文献をお示しした上で,原孝至基礎講座のテキストである『新スタンダードテキスト憲法』の該当部分を掲載(PDF)致します。本ブログ読者の皆様の学習にお役立て頂ければ幸いです。

【参考文献】

  ・芦部信喜『憲法』(岩波書店,第6版・高橋和之補訂,2015)(出版社HP書籍紹介参照

  P.224~230

  ・小山剛『「憲法上の権利」の作法』(尚学社,第3版,2016)(出版社HP書籍紹介参照

  P.18~21

  ・木下智史=伊藤建『基本憲法Ⅰ 基本的人権』(日本評論社,2017)(出版社HP書籍紹介参照

      P.199~216

ダウンロード
原孝至・基礎講座 教材
新スタンダードテキスト憲法P.244~254.pdf
PDFファイル 212.9 KB

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