【連載】近い将来を見据えた法律学の入門書 第10回 民法家族法編(最終回)

・二宮周平『家族と法-個人化と多様化の中で』(岩波新書(新赤版)1097)(岩波書店,2007)

定価(本体820円+税)(岩波書店HP書籍紹介

<著者紹介>

・二宮周平 立命館大学法学部教授(所属大学HP教員紹介

 この岩波新書の著者である二宮周平教授は,立命館大学法学部教授で,民法の家族法分野における多くの優れた研究業績があります。

 まず,この岩波新書は,本文242頁の分量で,「本書の目的は,第一に,具体的な家族の問題を解決するために必要な法の知識を提供すること,第二に,なぜそういう制度・仕組みになっているのか,またどこに問題があるのかを考えることである。…さらに,第三の問題として,これまで予想だにされていなかった問題,『問題だ』とは考えられてこなかった問題に対する法の対応を考えることである。」(同書はじめに)とされ,第三の問題として,事実婚,同姓カップル等を挙げておられます。このため,この岩波新書は,現行法の諸制度の解説のみならず,時折立法論をも交えて検討されており,興味深く読むことができます。

 また,この岩波新書の2015年の5刷では,判例・立法等の新たな動向について,加筆されております(P.242)。

<参 考>

 今回,この岩波新書を民法家族法の入門書としてお薦めさせて頂いた理由としては,その内容が非常に充実して興味深いこと他,同じく二宮周平教授の執筆の『家族法』(新世社,第4版,2013)(下記サイエンス社(新世社)HP書籍紹介参照)が,民法家族法分野における最高峰の基本書といわれているためです。

 この二宮教授の基本書は,「平易かつ詳細な記述で,家族法を基礎からわかりやすく解説した好評テキストの最新版。…」(サイエンス社(新世社)HP書籍紹介)とされ,ケースを多用した解説は,非常に分かり易いです。特に,計算が複雑な「遺留分」(同書P.422~457)に関しては,学術上同書の算定式を紹介することが多いようです。

 また,下記のサイエンス社(新世社)HP書籍紹介の「サポート情報あり」の部分に,『家族法 第4版』補遺(2017年12月)が掲載されており,最新の判例・立法の情報を知ることができます。

 そこで,近い将来この二宮教授の基本書を読む前に,同一著者で強い互換性のあるこの岩波新書を民法家族法の入門書として,お薦めさせて頂きました。

・二宮周平『家族法』(新世社,第4版,2013)

定価(本体3250円+税)(サイエンス社(新世社)HP書籍紹介