【連載】近い将来を見据えた法律学の入門書 第8回 商法総則・商行為法編

・山下眞弘『やさしい商法総則・商行為法』(法学書院,第三版補訂版,2015)

定価(本体1600円+税)(法学書院HP書籍紹介

<著者紹介>

・山下眞弘 大阪大学名誉教授・弁護士(所属法律事務所HP弁護士紹介

 同書の著者である山下眞弘教授は,大阪大学名誉教授で,現在弁護士です。

 同書は,本文・索引を含めて147頁の分量で,「本書は,商法総則・商行為法の内容を通説・判例をベースに解説した入門書です。平成26年の法改正に対応した補訂を施しました。」(上記法学書院HP書籍紹介)としています。

 まず,商法総則・商行為法の分野も,手形法・小切手法と同様に,会社法と比較して現行司法試験及び予備試験における重要度は低く,また,近時,商法総則・商行為法の基本書・参考書等の出版・改訂も非常に少なくなっております。しかし,このような状況下でも同書は,2015年の補訂で平成26年会社法改正に対応するなど,最新の情報を提供しています。

 また,同書の初版のはしがきでは,その特色を①~⑦で示していますが,その中でも,「③ 理解を容易にするため,単なる抽象論に陥らないよう具体的に説明した。そのため,具体的説明から始め,一般論へと進み,必要に応じて図表なども活用した。」と「⑦ 各章の末尾に,実際の出題例を中心に試験問題を掲げ,必要に応じてコメントを付した。本書によって,司法試験・司法書士試験など各種試験にも対応できるであろう。」との記載は,同書の充実した内容を端的に示しています。

 そして,商法総則・商行為法は,予備試験の短答式試験に毎年2問程度出題され,論文式試験は平成24年に出題されただけで,本格的な体系書を読んで勉強をしたのでは効率が悪いとして,手形法・小切手法同様にほとんど白紙の状態で本試験に臨む受験生も多いといわれています。もっとも,論文式試験で出題された場合,商法の50点満点中少なくとも5点から10点程度は配点があるものと推測されることから,合否を分ける貴重なこの配点を,この分野の諸制度・論点など網羅性のある同書の精読で得ることは可能であると思われます。ただ,同書は,判例の紹介が若干少ないので,江頭憲治郎・山下友信編『商法(総則商行為)判例百選』(有斐閣,第5版,2008)(下記有斐閣HP書籍紹介参照)も参照した方がよいと思われます。

 そこで,近い将来,予備試験短答式及び論文式試験に臨む前に,この『やさしい商法総則・商行為法』を,お薦めさせて頂きました。

<参 考>

・江頭憲治郎・山下友信編『商法(総則商行為)判例百選』(有斐閣,第5版,2008)(有斐閣HP書籍紹介