【連載】科目別「法律学習」の作法 第2回「憲法学習」の作法

 大学の法学部授業が始まった,法律学の入門書も読み終えたなど,本格的に法律学の勉強を始めたいという方のために,本コーナーでは,科目別の勉強方法の特色や受験生の多くが使用する基本書などの最新情報を提供致します。第2回は,「憲法学習」の作法です。

第2回「憲法学習」の作法


1 憲法学の特色

 憲法の意味に関しては多義的ですが,芦部信喜『憲法』(岩波書店,第6版・高橋和之補訂,2015)の「初版はしがき」の以下の記述に要約されているものと思われます。

 

「…憲法が,国家権力を制限し一定の権能を各国家機関に授権する法,制限し授権することによって人権を保障する法,であるところに本質がある点に思いを至し,そういう観点から憲法の意味やその現代における問題状況を検討し,国家権力の濫用から憲法を擁護するための制度的装置のあり方を探究する心がまえをもつことが,必要になろう。」

 

 また,同書「初版はしがき」では,大学で講義される憲法学について,以下のように述べ,解釈手法を示しておられます。

 

「…大学の憲法講義は,制度の枠組みの解説ではなく,その制度の沿革を探り,その趣旨,目的および機能を,それに関する諸々の見解の比較検討と対立しまたは絡み合う諸々の価値・利益の比較衡量とを通じて,具体的に明らかにし,一定の結論を導き出す論理構成の能力を養うこと,を目的にしているということである。」

 

 そして,憲法学は,①憲法総論,②人権論,③統治機構論の3つに分かれます。

 なお,下記ウィキペディアの「芦部信喜」では,上記で引用させて頂いた憲法学の第一人者である故・芦部信喜先生の学説を概観できます。また,下記国立国会図書館HP「日本国憲法の誕生」では,日本国憲法の制定過程に関する概説と貴重な資料を展示・解説しています。参考にして下さい。

2 現行司法試験及び予備試験論文式試験における特徴

 司法試験及び予備試験の短答式試験は,①憲法総論,②人権論,③統治機構論という憲法学の全領域から出題されますが,論文式試験は人権論からの出題が多いといえます。

 また,司法試験及び予備試験の論文式試験の憲法の特徴として,その特有の設問形式を挙げることができます。例えば,平成29年予備試験論文式試験憲法では,事例が示された後の設問文は,「甲(注:原告)の立場からの憲法上の主張とこれに対して想定される反論との対立点を明確にしつつ,あなた自身の見解を述べなさい。」とされています。この主張,反論,私見を論じさせる出題形式は旧司法試験にはなく,一部の例外を除いて,現行司法試験及び予備試験開始以来踏襲されております。

 そして,この特有の出題形式に対応した解答方法の大筋は,下記法務省HP「平成22年新司法試験論文式試験問題出題趣旨」などに記載されておりますが,書き方について受験生を悩ますことが多いことから,憲法学習の初期段階からこの設問形式を意識し,また,ある程度学習が進んだ後には,答案練習会などで実践してみる必要があります。

3 基礎講座受講の勧め

 司法試験及び予備試験にチャレンジされる方は,上記の憲法の論文式試験における特有の設問形式を意識しつつ,学習効率を高めるために受験指導校の基礎講座を受講されることを強くお勧め致します。

 ちなみに,辰已法律研究所の「司法試験 原孝至・基礎講座 2018年」は,法科大学院修了・新司法試験合格・弁護士の原孝至先生が,予備試験の法律科目全科目(法科大学院入試の法律科目を含む。)を一貫して指導する新時代の基礎講座です。

 まずは,本格講義に先立つ原孝至・基礎講座『法律学習導入講義』憲法をご覧の上,ご検討頂ければ幸いです。

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【ご参考】 憲法のお薦めの基本書・参考書

 書名に設定しているリンクのリンク先は出版社の当該書籍の紹介ページです。

 憲法学の第一人者である故・芦部信喜先生執筆の基本書(通称は,「芦部憲法」。)。芦部先生は,1999年に逝去されていますが,芦部先生の門下生である高橋和之教授による補訂がなされています。現時点においても,もっとも優れ,多数の受験生に使用されている基本書です。そして,憲法の全分野についてコンパクトにまとまっており,試験直前期のまとめにも最適です。

 芦部信喜先生による市民セミナーの速記をもとにまとめたものです。重要な憲法判例と違憲審査基準について分かりやすく解説されており,上記の芦部憲法を補完する参考書として最適です。

 憲法学者と現行司法試験合格者・弁護士の共著。図表やコラムなどを交えて分かりやすく解説されています。同書「第15講 憲法事例問題の解法」P.330~340などは,試験対策に配慮しています。上記の芦部憲法よりも読みやすいとの評価もあることから,芦部憲法より先に読んで憲法学のイメージを掴むのもよいかと思います。ただし,憲法総論,統治機構論は未刊なので,芦部憲法などを用いる必要があります。

 現司法試験及び予備試験考査委員の書。芦部憲法などの基本書を読み終えた後に,答案の書き方を学ぶための参考になります。

〈判例集について〉

 なお,上記の基本書などの他,判例集としては,下記のものが最適です。

 ・長谷部恭男・石川健治・宍戸常寿編『憲法判例百選Ⅰ』(有斐閣,第6版,2013)

 ・長谷部恭男・石川健治・宍戸常寿編『憲法判例百選Ⅱ』(有斐閣,第6版,2013)