【連載】科目別「法律学習」の作法 第4回「民事訴訟法学習」の作法

 大学の法学部授業が始まった,法律学の入門書も読み終えたなど,本格的に法律学の勉強を始めたいという方のために,本コーナーでは,科目別の勉強方法の特色や受験生の多くが使用する基本書などの最新情報を提供致します。第4回は,「民事訴訟法学習」の作法です。

第4回「民事訴訟法学習」の作法


1 民事訴訟法学の特色

 民事訴訟法の意義に関しては,裁判所職員総合研修所監修『民事訴訟法講義案』(司法協会,三訂版,2016)P.1の以下の記述に要約されているものと思われます。

 

「訴訟とは,広い意味では,国家機関が紛争ないし利害の衝突を強制的に解決,調整するために,対立する利害関係人を関与させて行う法的手続をいう。このうち,私法によって規律される生活関係を対象とするのが民事訴訟であり,…民事訴訟法は,これらの民事訴訟手続に準用される重要な基本規定を多く含む基本法典である。…」

 

 また,同書P.4~5では,民事訴訟法の特質として,「実体法との連動と手続法としての固有の要請」を挙げ,「学習上の視点」として,以下のように記述しています。

 

(実体法との関係)「で訴訟法と実体法との間には密接な関係があることを,」(手続法固有の要請(下記※参照)「では手続法固有の観点からの要請があることをみてきたが,実はこのような複眼的な視点は,これから学習する民事訴訟法全体を通して必要となる。…」

 

※ 同書P.4では,「手続安定の要請」「訴訟経済の要請」「画一的処理の要請」「迅速性の要請」を挙げています。

2 現行司法試験及び予備試験論文式試験における特徴

 旧司法試験の論文式試験では,長年第1問が説明問題(いわゆる一行問題)から,第2問が事例問題から出題されておりました。

 これに対して,現行司法試験及び予備試験では,民事訴訟法は1問のみ,事例問題が出題されております。

 そして,平成29年予備試験論文式試験民事訴訟法では冒頭,「次の文章を読んで,後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。」との記載のもと事例が掲載されており,〔設問1〕の設問文は,「下記の弁護士Lと司法修習生Pとの会話を読んだ上で,訴え提起の時点では未発生である利得分も含めて不当利得返還請求訴訟を提起することの適法性の有無について論じなさい。」となっており,時折会話文による誘導がなされる(司法試験の方は全設問で会話文による誘導がなされています。)点に,旧司法試験とは異なる特色があります。

 また,問われる内容は,民事訴訟手続の流れ,処分権主義・弁論主義などの基本原理,重要判例の知識・理解の他,各論点における学説の知識・理解も問われています。

3 基礎講座受講の勧め

 司法試験及び予備試験にチャレンジされる方は,上記の刑法学の特色を踏まえつつ学習効率を高めるために,受験指導校の基礎講座を受講されることを強くお勧め致します。

 ちなみに,辰已法律研究所の「司法試験 原孝至・基礎講座 2018年」は,法科大学院修了・新司法試験合格・弁護士の原孝至先生が,予備試験の法律科目全科目(法科大学院入試の法律科目を含む。)を一貫して指導する新時代の基礎講座です。ご検討頂ければ幸いです。

【ご参考】 民事訴訟法のお薦めの基本書・参考書

 書名に設定しているリンクのリンク先は出版社の当該書籍の紹介ページです。

 「…学説の世界の民事訴訟法と実務の世界の民事訴訟法とを融合して解説した画期的なテキスト…」(出版社HP書籍紹介)とされ,民事訴訟法学習者にとても人気があり,法学部生や法科大学院生,司法試験及び予備試験受験生などに多く使用されています。特に図表を多用して判例・学説を分かりやすく説明されている点がお薦めです。

 なお,下記講座は,同書をテキストとして和田先生自ら辰已法律研究所で御講義されたものです。

 裁判所書記官養成用に作成された書。その分かりやすさから旧司法試験時代から口コミで受験生に広がっています。旧司法試験論文式試験の説明問題(いわゆる一行問題)や予備試験の短答式試験のタネ本ともいわれます。もっとも,判決効などにおける学説知識は薄いので,上記の和田先生の基本書などと併用されるとよいでしょう。

 著者の一人である安西明子教授は,現司法試験及び予備試験考査委員です。280頁程度で民事訴訟法全体を手堅くまとめており,人気急上昇中のテキストです。ただ,頁数の制約からか,情報量としては,他のテキストと比較して少なめなので,上記の和田先生の基本書などと併用されるとよいでしょう。

〈判例集について〉

 なお,上記の基本書などの他,判例集としては,下記のものが最適です。

 ・高橋宏志・高田裕成・畑瑞穂編『民事訴訟法判例百選』(有斐閣,第5版,2015)