【連載】科目別「法律学習」の作法 第5回「刑事訴訟法学習」の作法

 大学の法学部授業が始まった,法律学の入門書も読み終えたなど,本格的に法律学の勉強を始めたいという方のために,本コーナーでは,科目別の勉強方法の特色や受験生の多くが使用する基本書などの最新情報を提供致します。第5回は,「刑事訴訟法学習」の作法です。


1 刑事訴訟法学の特色

 刑事訴訟法の意義に関しては,宇藤崇・松田岳士・堀江慎司『リーガルクエスト刑事訴訟法』(有斐閣,第2版,2018)P.1の「Outline」の部分の以下の記述に要約されているものと思われます。

「罪を犯した者には,刑法の定めに従い,国家によって刑罰が科されることが予定されている。しかし,実際に刑罰を科すためには,刑法が犯罪として定める行為が本当に行われたのか,そして,犯人が誰かを確認する必要がある。そのための手続を刑事手続といい,その内容を定めるのが本書の扱う刑事訴訟法である。」

 

 また,刑事訴訟法の目的に関しては,憲法31条以下を受けて,刑事訴訟法1条に「この法律は,刑事事件につき,公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ,事案の真相を明らかにし,刑罰法令を適正且つ迅速に適用実現することを目的とする。」と規定されています。このため,「適正手続」「実体的真実主義」「当事者主義」などが,現行刑事訴訟法の基本理念となります(上記『リーガルクエスト刑事訴訟法(第2版)』P.3~5,6~14等参照。)。

 

 さらに,刑事訴訟法は,「捜査法」「公訴・公判」「証拠法」の3つの領域に大きく分かれます。そして,上記の全領域における解釈論における判例の役割は,他の教科と比較してより比重が大きいといわれます。

 なお,刑事訴訟法の理念を体感できる近時の判例として,GPS捜査に関する最大判平29.3.15(刑集71-3-13,刑事訴訟法判例百選(第10版)30事件,下記裁判所HP裁判例情報参照)がありますので,是非参考にして下さい。

 当該GPS捜査の最高裁判例を素材とした原孝至・基礎講座ガイダンスを,本年2月に実施致しましたので,よろしければ参考にして下さい。

ダウンロード
司法試験 原孝至・基礎講座ガイダンス「合格の王道・OUTPUTから始めるINPU
PDFファイル 637.5 KB

2 現行司法試験及び予備試験論文式試験における特徴

 旧司法試験の論文式試験では,長年第1問が捜査法,第2問が公訴・公判,証拠法から出題されておりました。事例問題がほとんどでしたが,時折説明問題も出題されました。

 これに対して,現行司法試験及び予備試験では,刑事訴訟法は1問のみ,事例問題が出題されております。

 まず,司法試験の方ですが,平成30年は,〔設問1〕が捜査法,〔設問2〕が証拠法からの出題でした。毎年捜査法は必ず出題され,これと公訴・公判か証拠法が組み合わされて出題されております。

 他方,平成29年の予備試験の方は,〔設問1〕が捜査法,〔設問2〕が公訴・公判から出題されております。また,年によっては,捜査法と証拠法の組合せもあります。

 また,問われる内容は,捜査法全般や,訴因論,伝聞法則を中心とした証拠法の条文・判例の知識・理解の他,各論点における学説の知識・理解も問われています。

3 基礎講座受講の勧め

 司法試験及び予備試験にチャレンジされる方は,上記の刑法学の特色を踏まえつつ学習効率を高めるために,受験指導校の基礎講座を受講されることを強くお勧め致します。

 ちなみに,辰已法律研究所の「司法試験 原孝至・基礎講座 2018年」は,法科大学院修了・新司法試験合格・弁護士の原孝至先生が,予備試験の法律科目全科目(法科大学院入試の法律科目を含む。)を一貫して指導する新時代の基礎講座です。ご検討頂ければ幸いです。

【ご参考】 刑事訴訟法のお薦めの基本書・参考書

 書名に設定しているリンクのリンク先は出版社の当該書籍の紹介ページです。

 「刑事訴訟法の基本事項・重要事項を,わかりやすく丁寧に解説。関連項目の相互参照,豊富な小見出し,別枠での重要判例や充実したコラムなど,読みやすさに配慮したテキスト。2016(平成28)年刑訴法改正に加え,近年の重要判例にも対応した最新第2版。」(出版社HP書籍紹介)とされ,司法試験及び予備試験受験生に人気急上昇中の基本書です。著者の宇藤教授は元司法試験及び予備試験考査委員であり,証拠法部分などを執筆されている堀江教授は平成30年司法試験及び予備試験考査委員です。平成30年の司法試験論文式試験刑事系科目第2問設問2の伝聞法則などは,同書に記載されている問題意識が色濃く出たともいわれています。

 司法試験受験生の多くに精読された法学教室の連載を加筆し単行本化したもので,「…刑事手続の諸制度の趣旨・目的とそこから導かれる法解釈論の筋道を丁寧に解説。透徹した視点から刑事手続の全体構造と作動過程を鮮やかに描き出す。…」(出版社HP書籍紹介)とされ,刑事訴訟法学習者にとても人気があります。

 司法試験及び予備試験受験生に定番の演習書です。法科大学院の教員と法科大学院生との対話形式で解説されており,議論は若干高度な内容に及ぶものの,大変分かり易いです。また,平成30年の司法試験論文式試験刑事系科目第2問設問2の伝聞法則の領収書の事案に関しては,同書に類似の設問があります(同書P.337~347)。

〈判例集について〉

 なお,上記の基本書などの他,判例集としては,下記のものが最適です。

 ・井上正仁・大澤裕・川出敏裕『刑事訴訟法判例百選』(有斐閣,第10版,2017)