【新連載】基本三法【憲法・民法・刑法】の基礎知識 第1回 答案の書き方のポイント 基本編

 各科目の学習作法を習得した後に訪れるのは,学部の定期試験です。そこで本連載では,司法試験予備試験及び法科大学院入試対策も兼ねて,憲法・民法・刑法の基本三法の頻出論点に関する基礎知識を紹介させて頂きます。まずは,週2回程度の更新で,答案の書き方のポイント2回,民法総則3回,憲法人権論3回,刑法総論3回を掲載致します。

第1回 答案の書き方のポイント 基本編

 各科目の頻出論点に関する基礎知識を紹介する前に,平成29年司法試験予備試験合格者のAさん(平成30年法科大学院(既修)修了,平成30年司法試験受験)が,答案の書き方のポイントについて寄稿してくれましたので,以下,2回に分けて掲載致します。ご参考にして頂ければ幸いです。

本稿では,「点数がもらえる答案とは,どのような答案なのか。そのような答案を作成するためには,どのような心がけが必要なのか。」という観点から,私の経験を踏まえて,答案の書き方を検討してみようと思います。私自身,完全には実践できていない箇所が多々ありますが,理想論も含めて提示してみたいと思います。

1 法的三段論法と接続詞について

⑴ 法的三段論法は答案のフレームワークですが,実際にこれを運用することは簡単ではありません。

 三段論法においては,「BならばC」という大前提,「AならばB」という小前提を論じた上で,「よって,AならばCである。」という論理を踏むことになります。これを法律答案に引きなおすと,「BならばC」部分が規範,「AならばB」部分があてはめとなり,「よって,AならばCである」という結論が導出されることになります。まずは自分の答案が法的三段論法をきちんと踏めているか見直してみてください。

⑵ 次は,接続詞の使い方についてです。

 答案で論理を紡いでいく上で,接続詞は大変重要なものです。実際に答案を書いていると接続詞が破綻することは非常に多く,そのような答案では結局何をどういう論理で言いたいのかが分からなくなります。普段の答案から,接続詞の使い方に気を配ると,論理構造的にも優れた答案を作成することができるようになります。

2 問題提起について

 いざ答案を書く段階に入ると,一番はじめに書くことになるのが問題提起です。実は,答案の中で実力が表れるのは問題提起の部分であると感じています。

 問題提起の部分は,問題文のオウム返しになりがちです。少し慣れてくると,「~が問題となる。」というように,論点のタイトルを付け加えることが出来てきます。しかし,このままでは,問題の所在が示せておらず,導入として不十分です。

 そこで,「事案の問題提起」と「論点の問題提起」の間で,事案の特殊性に軽く触れることで,問題の所在を示すことを意識するとよいと思います。

3 規範について

 日々の学習のメインを占めるのは,規範部分についての学習です。

 この規範部分については,学習の進んだ方に注意していただきたいことがあります。長く勉強していると,学者の演習書を使うようになると思いますが,演習書の解説を自分の論証に組み込もうとすることには注意が必要です。演習書の解説は,数頁にわたる記述があってはじめて理解できるものであって,これを採点者に誤解されない論述で数行にまとめることは,並大抵の人には困難です。

 実際に答案に書く規範は,既存の論証集にあるようなシンプルな規範をそのまま用い,こねくりまわさないことをおすすめします。演習書で学べる本質論や理論的説明は,あてはめ部分のエッセンスとして使うのがよいと考えます。

4 あてはめについて

 あてはめ部分では,論点についての正確な理解にもとづき,規範の構造に沿ったあてはめを行うことが大切です。事実をごちゃごちゃに並べ立てるのではなく,問題文の事実を規範の構造に沿うように交通整理し,適宜法的評価を加えつつ,規範とあてはめが一対一対応となっているような答案にすると,印象が非常に良くなると思います。

 さらに,問題文の事実はほぼそのまま引き写して適示するということを強調したいと思います。学習が進んで慣れてくると,わざわざ事実を書き写すのが面倒になって,複数の事実を適当にまとめて示す人がいますが,これは点を稼ぐ観点からは止めたほうがよいです。

5 完成形としての答案のあるべき姿について

 ここまでの最低限のポイントを集約すると,「問題提起で問題の所在が見え,規範の論理がすっきりしており,あてはめがしっかりしている結果,結論がはっきりしている」答案,すなわち採点者にとって読みやすい答案が,点数のもらえる答案であり,答案のあるべき姿であると,私は考えています。

 一度,「採点者が読みやすくて点数をつけやすい答案になっているだろうか?」という目線で,自分の答案を振り返ってみると見直すべき点が多々あると思います。私自身も,見直すべき点がまだまだあるなと痛感しました。                     

 次回は,「答案の書き方のポイント 実践編」として,平成30年司法試験論文式試験民事系科目第1問(民法)設問1のAさん作成答案を掲載します。