
各科目の学習作法を習得した後に訪れるのは,学部の定期試験です。そこで本連載では,司法試験予備試験及び法科大学院入試対策も兼ねて,憲法・民法・刑法の基本三法の頻出論点に関する基礎知識を紹介させて頂きます。まずは,週2回程度の更新で,答案の書き方のポイント2回,民法総則3回,憲法人権論3回,刑法総論3回を掲載致します。
第11回 刑法総論「共謀共同正犯」
刑法60条(共同正犯)は,「二人以上共同して犯罪を実行した者は,すべて正犯とする。」と規定しています。そして,同条の文理解釈から,戦前から戦後初期においては,「犯罪の構成要件該当行為(実行行為)を行った者が共同正犯」(今井孟嘉ほか『刑法総論』(有斐閣,第2版,2012)P.375(島田聡一郎執筆,以下「リーガルクエスト」と言います。)より引用。)とする見解(形式的客観説)が有力でした。この見解では,共謀共同正犯は否定されます。もっとも,「…判例は,古くから,犯罪の謀議に参加したが,自らの手で実行行為を行っていない者を,他の共犯者が実行した犯罪について共同正犯として処罰」(リーガルクエストP.376より引用。)してきました。これを共謀共同正犯といいます。
この共謀共同正犯に関しては,前述のようにかつては否定説も有力でしたが,その後,否定説の代表的論者である団藤重光博士(最高裁判所判事)が,最決昭57.7.16(刑集36-6-695)で肯定説(優越支配共同正犯説)に転じるなど,現在では肯定説が圧倒的多数です(なお,地下鉄サリン事件等の一連のオウム真理教事件により,否定説は終焉を迎えたとの指摘もあります。)。そして,共謀共同正犯論は,その実務上・学術上の重要性から,新旧司法試験及び予備試験における頻出テーマとなっています。
もっとも,共謀共同正犯論は,現在は肯定説に依拠しつつも,具体的で妥当な処罰範囲を模索する方向に進んでいます。このような共謀共同正犯論を学ぶには,リーガルクエストの島田聡一郎教授執筆部分である共謀共同正犯の項が,わかりやすく説明しておりお勧めです。
なお,共謀の射程に関しては,橋爪隆「共謀の射程と共犯の錯誤」法学教室359号P.20~25が非常に優れた文献ですので,是非参考にして下さい。
・西田典之『刑法総論』(弘文堂,第2版,2010)(出版社HP書籍紹介参照)
P.344~354
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