9月11日(火)に平成30年司法試験の合格発表がありました。
今回は、平成22年司法試験に見事一発合格され、現在弁護士としてご活躍されている、西村あさひ法律事務所所属の弁護士・渡邉純子先生へのインタビュー記事をお届けします。

現在の仕事
現在はアジア案件を中心に取り扱っており,特に日本からベトナムに投資を行う日系企業のサポートを行っています。当事務所はベトナムのハノイとホーチミン両方にオフィスがあり,長期出張でハノイオフィスに数ヶ月滞在したことも何度かあります。今は東京から,主にM&Aなどの新規投資を行う日本のクライアントのサポートをしています。労働問題やコンプライアンス,紛争など,投資後の現地での運営・トラブルに関してアドバイスすることも多いです。日本の法律は基本的には使わず,現地の法律を使って現地の実務に照らしたアドバイスをすることになります。そのため,現地の弁護士資格を持った外国人弁護士と協働しながら進めることになります。新興国の実務や法制は日本と異なるところも多く,新しい国で新規ビジネスを展開しようとするクライアントにとっては右も左も解らないということが多いので,現地の商慣習・人の考え方なども含めて広くアドバイスを求められることが多いですね。
仕事の魅力
やはり,母国とは違う国で,自分とは異なるバックグラウンドを持った人達と協働することで,自分にとっても日々新しい発見が多いことでしょうか。先進国では考えられないような奇想天外な事件が起こることもよくあります。何が起きても驚かないマインドが身につくのは新興国のプラクティスならではかと思います。ライフワークバランスや新しい物事へのチャレンジ精神など,ベトナム人の考え方から学ぶ点も多いです。
所属事務所について
弁護士が600人近く在籍しており,法域を問わず,多くの分野で最先端の実務を開拓している弁護士の集団なので,とても刺激的です。また,海外拠点の拡大も含め,積極的に手を挙げる若手には多くのチャンスが与えられる環境もあるので,これから,日本に限らず世界の色々な国で弁護士業務を経験したいと考えている受験生の皆さんにとっても,大きな魅力があるのではないでしょうか。
辰已の講座について
辰已の答練は,本番のシミュレーションになって,すごく良かったです!やはり,強制的な機会がないと,なかなか自分で時間を測って問題を解くことは難しいので。「スタンダード論文答練」の第1クール・第2クールと「全国模試」を受けました。周りでは年明けから受ける人が多かった記憶ですが,個人的には不安だったので秋から受けました。時間内に解く良い練習になったと思います。
司法試験について
論文式試験対策
得点に直結するのは,事前にインプットした量ではなく,基本的なことを,答案用紙上で的確に伝わるように,かつバランスよく書くことだと思います。その意味では,個人的には知識の量では全然敵わない受験生もたくさんいたと思います。
基本書は行政法の櫻井=橋本しか読まなくて,その他は基本書の通読ということは一切しなかった記憶です。始めるとキリがなさそうでしたし,性格的にも向かなかったので。
答案を書く上で工夫したこと
「キーワードを複数回記載する」とか,「一文を短く」とか,とてもシンプルなことですね。あと,問題意識の出発点をきちんと明確にすることでしょうか。条文の文言から書けるものなら書いて,法律家らしく書いているという姿勢を見せるなど。
改行や,ナンバリングで答案を読みやすくすることも意外と大事だと思います。採点者も,同じような答案を何百通も読んでいるので,長々と書くことが良いことだとは思っていませんでした。
法律の解釈に関する部分はそれまで勉強してきた基本的な内容をシンプルに書きつつ,その後のあてはめのところは問題文中の使えそうな事実を諸々拾った上で,事実に関する評価に関しては,「自分なりに何か工夫をして評価している」という姿勢を見せれば良いのではないかと思います。
短答式試験対策
短答に関する知識は特に直前に詰め込みました。そのほうがお薦めです。いずれにしろ短答に出題されるような細かい話は時間が経つと忘れてしまうので。具体的には試験の年の年明けからだったと思います。ただ,年内にも一応過去問はひととおり回しておいて,苦手と思うものだけに付箋を付けておく作業を先にやった上で,実際に潰していく=記憶を定着させていくのは年明けから,という方法が効率が良いように思います。それで,「これはもう大丈夫」と思ったものから,どんどん付箋を外していっていた記憶です。ただ,最後は当日試験会場で,次の科目のために途中退出までして一人で覚えていましたね。途中退出という手段を有効に使う人はあまりいないように思いますし,土壇場で考えついたような裏技ですが,意外とお薦めです。短答については,覚えることも多いですし,当日実際の試験で,簡単と思えた科目で無為に時間をつぶしても勿体ないので。
メンタルコントロール
日頃の成績がすごく良い人でも,本番に弱かったり,当日急に体調が悪くなってしまい途中までしか試験を受けられない人などもいるかと思いますが,それはもったいないと思います。メンタルコントロールのコツですが,私の場合は「もう今回ダメだったらその次は絶対に受けない」と決めていましたね。終わりが見えるからこそ頑張れるという部分もあるかと思います。特に受験は,仕事と違ってずっと続くものでもないので,これで最後でいいんだと思って当日試験会場に足を運べば,自然と,それまでにやってきたことを無駄にしないようにしようという気持ちになって,冷静に,それまで身につけてきたものを発揮できると思います。「やってきたことを全てぶつけよう」という思いで,試験当日は自信を持って臨むと良いと思います。
今の仕事に活きていること
試験を受けたのは大分昔の話ではありますが,役立っている部分もあると思います。例えば,優先順位を付けることなどでしょうか。どんな仕事でも同じだと思いますが,仕事の量が多い時には色々と同時並行で処理しなければいけないので,そうすると「これをやっている間にあれをここでこう処理しておこう」とか,同時にいくつものことを優先順位をつけてやることが必要とされる場面も多いので,1つのことにのめり込みすぎないで全科目をバランスよく回すとか,そういう全体のスケジュールを自分で組み立てるということには役立っていると思います。私の場合は,受験生の時からそういう処理の仕方を心がけていたように思います。
これから勉強を始める方へ応援メッセージ
学校の勉強は,ある程度良い成績を取っておかないと就職活動にも影響があると思うのでもちろん大切だとは思いますが,試験も大事だと思うので,あまり予習・復習ばかりに時間を使いすぎず,辰已の答練を使ったりして,早く受験の勉強を始めたほうがいいと思います。いろいろと大変だとは思いますが。資格を持っていると強みになることも多いので(特に女性は!)頑張ってください。
※辰已法律研究所「司法試験受験情報 Ready´18大学新入生向け」より抜粋