
各科目の学習作法を習得した後に訪れるのは,学部の定期試験です。そこで本連載では,司法試験予備試験及び法科大学院入試対策も兼ねて,憲法・民法・刑法の基本三法の頻出論点に関する基礎知識を紹介させて頂きます。今回の続編では,民法債権法5回,憲法統治機構論2回,刑法各論3回,民法物権法3回程度を掲載致します。
第2回 民法債権法「債権譲渡」
債権譲渡とは,具体的には,「債権者Aが債務者Bに対する債権をその同一性を変じることなく第三者Cに譲渡し,譲受人Cが新債権者となる契約」(野村豊弘ほか『民法Ⅲ-債権総論』(有斐閣,第4版,2018)(有斐閣Sシリーズ)P.176(池田真朗執筆))です。厳密な定義としては,「債権を,その同一性を変じることなく第三者に移転することであり,譲渡人(旧債権者)と譲受人(新債権者)との間の契約で行われる」(前掲・Sシリーズ民法ⅢP.189)ものです。
この債権譲渡における主要な論点等は,①譲渡制限特約,②将来債権の譲渡性,③債権譲渡の対抗要件,④異議をとどめない承諾による抗弁喪失などがあり,上記①②④は,平成29年民法(債権法)改正で大きく変わります。
そして,従来司法試験における一番重要な論点とされているのは,上記③債権譲渡の対抗要件(前掲・民法ⅢP.192~208)であり,受験生としては,とりわけ,確定日付(前掲・Sシリーズ民法ⅢP.198~9),優劣決定の基準(前掲・Sシリーズ民法ⅢP.202~5)は,判例理論に沿って正確に押さえておく必要があります。また,前掲・Sシリーズ民法ⅢP.202掲載の「図13 指名債権の二重譲渡と優劣の基準」は,非常に分かり易いので,是非参考にして下さい。
なお,債権譲渡に関しては,池田真朗武蔵野大学法学部教授・慶応義塾大学名誉教授の研究業績が大きいといえます(同『債権譲渡の研究』(弘文堂,増補第2版,2005)等参照)。前掲・Sシリーズ民法ⅢP.176~232「第6章 債権譲渡と債務引受」は,同教授が執筆しており,内容が非常に充実しております。また,同教授執筆の事例問題とその解説として,山田卓生ほか『分析と展開 民法Ⅱ』(弘文堂,第5版,2005)P.85~104「8 債権譲渡」があります。併せて参考にされるとよいでしょう。
下記で参考文献をお示しした上で,原孝至基礎講座のテキストである『新スタンダードテキスト民法Ⅱ』(改正民法にも対応)の該当部分を掲載(PDF)致します。本ブログ読者の皆様の学習にお役立て頂ければ幸いです。
・民法の一部を改正する法律(債権法改正)について(法務省HP)
説明資料に「債権譲渡に関する見直し」も掲載されています。
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