
各科目の学習作法を習得した後に訪れるのは,学部の定期試験です。そこで本連載では,司法試験予備試験及び法科大学院入試対策も兼ねて,憲法・民法・刑法の基本三法の頻出論点に関する基礎知識を紹介させて頂きます。今回の続編では,民法債権法5回,憲法統治機構論2回,刑法各論3回,民法物権法3回程度を掲載致します。
第5回 民法債権法「信頼関係破壊法理」
信頼関係破壊法理は,不動産賃貸借において,賃貸人の解除権を制限するとともに賃貸人の解除権を拡張した判例・学説上の法理といえます。すなわち,「形式的には賃借人の債務不履行があっても,一定の場合には,賃貸人の解除が認められない。…賃借人に当事者間の信頼関係を破壊するにいたる程度の不誠実がない限り,賃貸人の解除権の行使は信義則上許されないという,という法理である…。賃貸人の債務不履行が当事者間の信頼関係を破壊する場合,賃貸人は催告することなく契約を解除できる…。」(中田裕康『契約法』(有斐閣,2017)P.423)。「つまり,信頼関係破壊法理は,2つの異なる方向の規律を再統合したものである。賃借人の債務不履行そのものよりも,賃貸借の当事者間の信頼関係破壊の有無を重視し,破壊されているときは無催告解除を認め,そうでなければ解除権の行使を封じる。」(中田・前掲書P.424)ものです。なお,この法理の沿革については,藤岡康宏ほか『民法Ⅳ―債権各論(有斐閣Sシリーズ)』(有斐閣,第3版補訂,2009)P.128~9(浦川道太郎執筆)参照。
また,信頼関係破壊法理が問題となる場面として,無断転貸,賃料不払,増改築禁止特約違反,用法遵守義務違反などが挙げられます。
そして,信頼関係破壊法理などの判例法理については,池田真朗教授は,「…こういうレベルのものは,大学の学年末試験でも,よく出題される。とくに,判例付きでない六法の持ち込みが許される試験では,事例問題で,判例法理の知識をからめた解答が要求される場合がある。受験者の学習の程度がよくわかるからである。」(同『スタートライン債権法』(日本評論社,第6版,2017)P.119)と指摘されています。
また,この信頼関係破壊法理に関連する演習として,沖野眞已ほか編著『民法演習サブノート210問』(弘文堂,2018)P.251~2(山城一真執筆)や山田卓生ほか『分析と展開 民法Ⅱ』(弘文堂,第5版,2005)P.231~247(鎌田薫執筆)が非常に有益です。
下記で参考文献をお示しした上で,原孝至基礎講座のテキストである『新スタンダードテキスト民法Ⅱ』(改正民法にも対応)の該当部分を掲載(PDF)致します。本ブログ読者の皆様の学習にお役立て頂ければ幸いです。
・沖野眞已ほか編著『民法演習サブノート210問』(弘文堂,2018)(出版社HP書籍紹介参照)
P.251~2
・山田卓生ほか『分析と展開 民法Ⅱ』(弘文堂,第5版,2005)(出版社HP書籍紹介参照)
P.231~247
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