【連載】続・基本三法【憲法・民法・刑法】の基礎知識 第6回 憲法統治機構論「国政調査権」

 各科目の学習作法を習得した後に訪れるのは,学部の定期試験です。そこで本連載では,司法試験予備試験及び法科大学院入試対策も兼ねて,憲法・民法・刑法の基本三法の頻出論点に関する基礎知識を紹介させて頂きます。今回の続編では,民法債権法5回,憲法統治機構論2回,刑法各論3回,民法物権法3回程度を掲載致します。

第6回 憲法統治機構論「国政調査権」

 憲法62条は,「両議院は,各々国政に関する調査を行ひ,これに関して,証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。」と規定し,「議院の権能として,国政調査権を新たに認め,しかも証言ないし記録の提出を求める強制権の裏づけを与えて,それを強化してい」(芦部信喜『憲法』(岩波書店,第6版・高橋和之補訂,2015)P.317)ます。もっとも,この国政調査権の性質や範囲・限界について,議論がなされており,統治機構論の基本構造に関連する重要論点とされております。

 まず,国政調査権の性質として,独立権能説と補助的権能説の争いがあります。これは,「国政調査権は,憲法41条の『国権の最高機関』性に基づく,国権統括のための独立の権能であるのか,それとも議院に与えられた権能を実効的に行使するために認められた補助的な権能であるか,という問題」(芦部・前掲書P.317~8)です。この点,国権の最高機関性について,統括機関説ではなく政治的美称説に依拠し(芦部・前掲書P.295),国政調査権の性質について補助的権能と解する(芦部・前掲書P.318)のが通説といえます。もっとも,「国会の権能,とくに立法権は広汎な事項に及んでいるので,国政に関連のない純粋に私的な事項を除き,国政調査権の及ぶ範囲は国政のほぼ全般にわたる」(芦部・前掲書P.318)とされています。なお,浦和事件(芦部・前掲書P.318)参照。

 次に,国政調査権の範囲と限界が問題となります。この点,補助的権能説に依拠した場合,「調査の目的は立法,予算審議,行政監督など,議院の憲法上の権能を実効的に行使するためのものでばければならないし,調査の方法にも,…権力分立と人権の原理からの制約がある」(芦部・前掲書P.318)とされております。そして,芦部・前掲書P.319~321では,「①司法権との関係」「②検察権との関係」「③一般行政権との関係」「④人権との関係」について検討されています(なお,木下和朗「国政調査権の意義と限界」大石眞・石川健治編『憲法の争点』(有斐閣,2008)P.202~3も参照されるとよいでしょう。)。

 また,この国政調査権に関連する演習として,芦部信喜『演習憲法』(有斐閣,新版,1988)P.239~242(設問〔39〕国政調査権と人権),P.243~248(設問〔40〕国政調査権の法的性質と機能)があります。

 下記で参考文献をお示しした上で,原孝至基礎講座のテキストである『新スタンダードテキスト憲法』の該当部分を掲載(PDF)致します。本ブログ読者の皆様の学習にお役立て頂ければ幸いです。

 【参考文献】

 ・芦部信喜『憲法』(岩波書店,第6版・高橋和之補訂,2015)(出版社HP書籍紹介参照

  P.317~321

 ・芦部信喜『演習憲法』(有斐閣,新版,1988)(出版社HP書籍紹介参照

  P.239~248

 ・新井誠ほか『憲法Ⅰ総論・統治』(日本評論社,2016)(出版社HP書籍紹介参照

  P.115~7,146~8,163~4

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原孝至・基礎講座 教材
新スタンダードテキスト憲法P.418~423.pdf
PDFファイル 149.0 KB

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