5月19日(日)本年の司法試験及び司法試験予備試験の短答式試験が終了しました。
受験された皆様、本当にお疲れ様でした。
本日は、これから予備試験、法科大学院入試、司法試験を目指す方に向けて辰已法律研究所の法律入門講座である「原孝至・基礎講座」のご紹介をいたします。
※本記事は、ストリーミング配信中のガイダンス『原孝至・基礎講座2019年春生ガイダンス「法曹を目指すあなたが今知るべきこと・すべきこと」』を再現したものです。
~始めに~
辰已専任講師・弁護士の原孝至と申します。今日は、原孝至・基礎講座のガイダンスとして、「法曹
を目指すあなたが今知るべきこと・すべきこと」についてお話をしていきたいと思います。
~講座の趣旨~
この基礎講座は、これからいわゆる法曹三者(裁判官・検察官・弁護士)を目指す人を対象にした講
座です。当然、法曹三者になるためには、最終的には司法試験に合格する必要があります。その前段階
として、ロースクールの入試に合格する、あるいは予備試験に合格する必要があります。ロースクール
入試・予備試験・司法試験いずれにしても問われるのは法律に関する知識・理解です。もちろん、ロー
スクール入試・予備試験となると、法律以外のことも聞かれますが、大部分は法律に関するものと理解
していただいて構いません。司法試験においては法律の科目だけということになります。法律家を目指
すわけですから、法律が最終的にできるようにならなければ試験に合格しないということで、法律がで
きるようになる足がかりを作ろうというのがこの講座の趣旨です。
これから法律家を目指すというみなさんが、まだ本格的に勉強を開始していないということを前提と
します。例えば法学部に行って法学部で法律を学んだら司法試験に受かるくらいの実力がつくかという
と、なかなかそうはいきません。大学で学ぶ学問としての法律学と、司法試験としての法律学というの
は、やはり質の違うものであり、大学で四年間講義を聴いていれば合格するというわけにはなかなかい
きません。多くの合格者もそのように言うと思います。ですから、この基礎講座は試験に直結する
形で力をつけていくという位置付けだと理解していただければと思います。辰已法律研究所で今年も
パンフレットを作成しまして、この基礎講座をどんな形で進めていくのかを詳しく紹介してありますの
で、読んでいただくといいかなと思います。
【資料請求受付中】原孝至・基礎講座2019年春生
パンフレットの閲覧・請求はこちらから
~講座の2つのコンセプト~
この講座には大きく分けると2つのコンセプトがあります。
一つは短時間であること。もう一つはアウトプット、すなわち問題を目の前に置いてでき
る限り実践的に問題を解くところからスタートすること。この2つに重点を置いてやっていきた
いと思います。
今弁護士をやっている私も当然司法試験に合格しているわけですが、初体験として司法試験の勉強
を始めて、試験に合格するというのは人生に一回で、正直振り返ってみて、自分が順風満帆の受験生生
活を送ったかというと必ずしもそうではなくて、あれは無駄だった、もっとこうすればよかった、とい
うような反省点はいくつも出てきます。
その反省点をもとに、もし私が今また法律家を志して勉強を始めるとしたら、こんな講座があってこ
んな風に進めていったら一番いいな、というところを体現していくものにしたいと思ってカリキュラム
等を組んでおります。私一人の経験と反省だけでは不十分なところもありますから、毎年合格者の方と
対談をさせていただいております。今回のパンフレットにも対談の様子が掲載されています。毎年、ト
ップで合格した方や、私の講座を受けていただいて短期で合格した方と対談しまして、その対談の結果
も反映して講座のデザインをしていこうと思っています。私の経験・歴代の多くの合格者の話から、短
時間の基礎講座であること・アウトプットを重視した勉強のスタートであること、この2点が、これか
ら勉強していただく受講生のみなさんにとってベストだと結論づけまして、引き続きこの2点を重視し
てやっていきたいと思っています。
~コンセプト①短時間の基礎講座であること~
まず一点目の短時間の基礎講座であることについてお話しします。司法試験予備試験を考えたとき、
主に試験に出る科目は7科目あります。憲法・行政法・民法・商法・民事訴訟法・刑法・刑事訴訟法の7
つの法律が、基本7科目となります。これを勉強していくとなると、分量的には結構多いものがありま
す。一般的に、最終的に司法試験合格に至るまでの総勉強時間は10000時間程度だと思います。
この司法試験業界には、「まわす」という言い方があります。教科書を端から端までゆっくり読んで
ゆっくり一回勉強するのではなく、とにかく早く読むということを何度も繰り返した方が、同じ時間を
かけても力になるとよく言われます。例えば100時間あるとき、100時間かけて1冊の教科書を1回じ
っくり読むよりは、10時間を10回やった方が力になるということです。合格者のみなさんも、反復が
力になると口をそろえて言います。これは私の経験からもそうです。司法試験を目指す人の中には、1
回教科書をサーっと読めばわかってしまうような天才的な人もまれにいて、そういう方には基礎講座な
んて必要ないでしょう。ただ、大部分の99%以上の受験生の方はそうではないです。私も、苦労して何
度も繰り返し勉強して、初めてできるようになるという経験がありました。
教える講師の側からすると、端から端まで長い時間をかけて重箱の隅までお話しするのが一番やりや
すく単純です。それが一番楽ではありますが、それは短期合格にとって必ずしもいいことではありませ
ん。「穴があってもいいから、とにかく全体を一回早く見て把握する。そのうえで二度目・三度目勉強
する。二度目・三度目・四度目と何度もやるから頭に少しずつ残っていく。頭に残っているものが一定
の水準に到達した時に合格する。」こんな言い方を合格者はします。だから、辰已の私の基礎講座で
は、300時間ちょっとくらいでやっていこうと考えています。中にはこの2倍3倍の時間をかける基礎
講座とか入門講座とか呼ばれるものがありますが、早期合格・短期合格を目指す場合には、とにかく1
周ざっとやって、2度目3度目のスタートをいかに早く切るかが重要です。合格者からも、やってみたら
結局のところ早く1回終わりにして2周目からどんどん自分で勉強できたのがよかったという感想をいた
だきます。ですので、300時間くらいを目途とするというルールを貫徹してやっていきたいと思いま
す。
300時間を少し超えてしまうのは、2020年から、7つの科目のうち最も重要な民法がかなり大きく
改正されることに関係します。おそらく、2019年の基礎講座を受講される方は、一番早いところで
2020年の予備試験・ロースクール入試を狙っていかれるでしょうから、この2020年の試験からは新
しい改正民法からの出題になります。もちろんこの講座は改正民法に対応してやっていきますが、一つ
問題があります。法律に限った話ではないですが、なにか制度が変わるときというのはbeforeとafter
があって、afterだけを教えてもなかなかすっと頭に入ってこないものです。なぜそうしたのか、
beforeの部分にも触れていきたいところがあり、300時間を少し超える時間割になっています。いずれ
にしても、だいたい300時間で完成させるというコンセプトは変えずにやっていきます。
~コンセプト②アウトプットを重視~
もう一つの重要なエッセンスとして、アウトプットを意識してやっていきます。
これは、物事ができるようになっていくプロセスを考えればおのずと答えが出ます。例えば、みなさ
んスマートフォンやパソコンを使えると思いますが、これらを使えるようになったプロセスを考えてみ
ましょう。
スマートフォンやパソコンを購入すると分厚い取扱説明書がついていると思いますが、みなさんはま
ず取扱説明書を端から端まで読んでスマートフォンやパソコンを使い始めるでしょうか。おそらく答え
はノーだと思います。全く見ない方もいるのではないでしょうか。見よう見まねでいじってみて、なん
となく見つけた法則性や経験に基づいて、できるようになると思います。要は、「習うより慣れよ」、
これは物事ができるようになっていくプロセスとして普遍性を持っていると思います。これはスマート
フォンやパソコンに限った話ではなく、言語もそうだと思います。みなさん今日本語ができると思いま
すが、日本語を勉強するとき一生懸命文法書を読みましたか?
読んでないと思います。たぶん小さい頃は親がしゃべっている言葉を聞いて理解して、自分も同じよ
うに真似してしゃべるようになって、間違った言葉遣いがあったら誰かに正してもらって、それで日本
語の読み書きができるようになるというプロセスを経ると思うんですね。
司法試験についても実は全く同じです。
例えば数学の試験でも、数学の教科書を読み込んで数学ができるようになるのかというとそうではな
くて、基本例題を解いてみて、解き方を把握して実践して、新しい問題に当たってできるようになる、
という過程を経るのではないかと思います。しかしながら、頭の中ではそれを分かっていてそういう経
験があったとしても、法律の勉強をしているとその逆を行ってしまう人が多いです。とにかく教科書を
読んで、物事を知るということをしないと気が済まない。ある程度知識を頭の中に入れてからじゃない
とよくわからないから、問題を解きたくない。こんな風に考える人が実は多くて、いつまでたってもイ
ンプット、一生懸命教科書を読んで頭の中に入れるという勉強をしてしまう人がいます。それでいざ問
題を解こうと問題を目の前に置いてみると、問題の解き方がわからない、あるいは勉強した知識とは違
う観点から聞かれていてインプットとアウトプットが繋がっていかないという現象が起こります。これ
が実は司法試験に合格するまでに長期かかる人と短期で済む人の違いです。
短期合格者は、勉強開始時点の早い段階から、どんどん問題を解いていたと口をそろえます。苦労し
て合格した人はその逆。割と早い段階ではインプット重視で、たくさん知識を頭の中に入れていこうと
いう勉強をしていた。いざ問題を解こうと思ったらなかなか解けないから、仕方なくたくさん問題を解
くしかない。かなり長い時間をかけてインプットした後に問題を解くというやり方を重ねていく。結
果、勉強が長くかかる。ここに大きな違いが出てくる。だから基礎講座では、早い段階からアウトプッ
ト、問題を解くということをやっていきます。講義の最初の段階で、試験に出るとしたらこんな問題が
出ます、だからこういうところを勉強していきましょうね、と問題を目の前に置いてやっていくスタイ
ルをとっていきます。要するにゴールが見えなければ何をプロセスとして踏んでいいか分からない。だ
から、はじめからある程度、問題で問われるとしたらこんな感じで問われますよ、というところを見せ
てしまいます。そうして問題を解く経験を積んでもらって、問題を解くためには何をどう勉強したらい
いのかを意識して進めていきたいと思います。
一年間の基礎講座で事例問題をだいたい100問当たっていくというイメージでやっていきます。100
問と言われても多いのか少ないのか分からないと思いますが、結構多いと思います。100の基本例題を
まず基礎講座で勉強していただいて、その先は過去問の勉強もあるし、答練という問題演習をしていく
講座も用意されています。とにかく、最終的には問題を解かなきゃいけないわけですから。特に司法試
験の場合には、論文式試験、文書で問題が与えられて文書で解答していくことができないと合格しませ
んので、そのような問題に対応するために論文式の問題を100問用意してありますので、それに早いう
ちから当たって、問題を解くための勉強を意識していきたいということですね。
~3つ目のコンセプト~
講座としては早10年近くになると思いますが、合格者もたくさん出てくれて、過去の受講生に裁判所
等々でお会いして声をかけていただいて、時間がたつのは早いなあと思うところです。講座出身者から
裁判官が出始めると、裁判官は法壇の上、私弁護士は壇の下にいますから、かつての受講生のみなさん
が上から私を見ているという状況も起こりつつあります。
ここでもう一つ、三つめの特長を言うのであれば、実務の話を講義に交えていることが挙げられま
す。弁護士も働き方は様々ですが、私は裁判所での仕事を中心的にやっている、結構古典的な弁護士か
なと思います。案件としては、交通事故とか離婚とか相続とか、一般的で身近な事件をたくさんやって
います。実務家としても、弁護士としてバリバリやっている方だと思います。実務の経験もお話ししな
がら、法律家の仕事って面白いじゃないかとか、あるいは実務的にはこうなのか、裁判所での実際の運
用がこうだから法律だってこうなっているのかという風な、実務における裁判のイメージも作ってい
き、頭に残りやすい形でお話をしていきたいと思います。講師の仕事だけで実務から離れてしまうとそ
ういったお話もできないわけですから、そういった実務の話もふんだんにしながら、聞いて楽しい講座
にしていきたいと思います
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