
基礎講座ご担当の辰已専任講師・弁護士原孝至先生と2018年の予備試験論文試験を見事1位で突破した開原早紀さんとの対談の内容を3回にわたりお届けします。予備試験や法科大学院に興味がある方や法曹を目指している大学在学生の方に、学習のヒントとなるお話が盛り沢山です。ぜひご覧ください。
※対談は、2018年11月に実施したものです。
法曹を目指すきっかけ
原 :開原さんは、今年の予備試験論文試験にトップで合格したと聞きました。非常に優秀な立派な成績
で合格されたということで、本日の対談の趣旨としては、これから司法試験、予備試験に向けて勉強
を始める人の指針、ガイドになるようなお話を聞かせていただきたいと思います。
まず、法律家を目指そうと思ったのはいつ頃ですか。
開原:私が法律家を目指そうと思ったのは、高校2年生の夏頃です。
原 :何かきっかけはありましたか。
開原:将来の進路に悩んでいた時期で、その時期にタイミングよくと言ったらいいかわからないですが、
冤罪事件の再審決定についてのニュースがどのチャンネルを付けても流れている時期がありまして、
冤罪事件のニュースに心を打たれて、弁護士になろうと決めました。
原 :おそらく冤罪事件というのは、「袴田事件」のことですよね。私も弁護士ですから、当然事件につ
いては関心を持っていたところですが、あのニュースを見てどう思いましたか。
開原:当時高校2年生でしたが、冤罪事件という言葉を知っていても、実際には見たこともなくて、実際
にそういう事件がありました、というのがすごく衝撃的だったので、とても印象に残りました。
原 :確かに袴田事件は再審手続中でまだ最終的な結論は出ていないのだけれども、もし本当に冤罪であ
れば、何とかして救わなければいけないと思いますね。
そういうきっかけで法律家を目指そうと思ったということは、やっぱり最初は裁判官や検察官とい
うより弁護士というものをイメージしましたか。
開原:はい、将来は刑事弁護をやりたいです。
原 :かっこいいですね。私も開業して、刑事事件も全体の業務の1割ぐらいでしょうか、受任件数があ
ります。とってもやりがいがある、少年事件も含めて考えると、掛けた労力に対して、やったなぁと
いう気持ちが出てくると思いますから、ぜひその道に進んで、第一人者に上り詰めてほしいと思いま
す。
予備試験論文トップ合格者の法律学習の軌跡
~法律学習初学者(大学1年生の頃)~
原 :では、高校2年生の時に弁護士になりたいな、と思って、高校3年生のときに、法学部を大学受験し
たわけですよね。そして、中央大学に進学されて、大学1年生の頃から法律の勉強は始めたのでしょ
うか。
開原:本格的に始めたのは、1年生の10月からです。
原 :では大学1年生の10月にどんなことから始めましたか。
開原:中央大学の法学部では、前期の1番始めに学ぶ法律科目が民法だったんですけれども、とりあえず
民法をひと通り何とかさらおう、というところから始めました。そして、後期は、勉強進度として
は、憲法、刑法に手を付ける時期でしたので、同時並行で憲法と刑法の入門の勉強を始めました。
原 :民法は分量が多いから、大変だったと思います。
開原:民法はすごく苦労しました。1年生の10月から周りに追いつこうと思って始めましたが、分量が多
いということからも全然導入の勉強が終わりませんでした。最初、市販の本を総則から債権各論まで
揃えましたが、結局途中で挫折してしまって、1年の後期の段階ではほとんど身に付いていませんで
した。
原 :確かに、民法を自力で勉強しようとすると、結構大変ですよね。
開原:はい。
~大学2年生の頃~
原 :民法には苦手意識を持ってしまったのですね。では、2年生になってどのように勉強していきまし
たか。
開原:まず、刑法、憲法は、とりあえず1年の後期でひとまず置いておいて、2年生の頭から周りの進度と
しては、民事訴訟法と刑事訴訟法の導入の勉強を始める時期だったので、その勉強をしました。あと
民法については、逃げたら終わると思っていたので、学部の2年次にふられている民法のゼミを履修
して、とにかく民法に触れるようにしていました。
原 :ゼミというのは、具体的にどんなことをやるゼミだったのですか。
開原:そのゼミは、通年で取っていたのですが、総則と担保物権の前まで物権の範囲を学者の先生の基本
書を使って、その基本書をしっかり読んで理解しようという内容のゼミでした。担当の先生は、民法
総則の範囲に限らず、関連する債権であったり、それこそ担保物権であったりの分野を結び付けて理
解させてくださいました。範囲としては、総則と担保物権以外の物権だったのですが、けっこう民法
の考え方というのは、そのゼミで教わりました。
原 :マンツーマンとまでは言わないまでも、ゼミ形式で考え方を学ぶ機会に恵まれたということです
ね。それでだいぶ民法の本も読めるようになったのでしょうか。
開原:はい。
原 :そうですよね、自分でやっていくと、本の内容が頭の中に入っていかないと思います。だから、き
ちんと考え方を教わって、理解ができるようになったのですね。そのように、勉強をしていって、民
法については、以降は市販の本を読みまわしながらという感じでしょうか。
開原:民法については、2年生の1年間で大体の考え方というのが染み付いてきました。そこから市販の演
習書というのを使って、1個1個の論点について問題の所在から、なんでこの規範になるのかというこ
とを、全部自分で納得できるまで調べ尽くして、1個1個理解していくことを進めていきました。
※本記事は、辰已法律研究所「司法試験 原孝至・基礎講座2019年春生」パンフレットP4~P5掲載の対談について、紙面の都合上割愛した内容を追加したものです。