[連載 第3回]【対談】原孝至先生×2018年予備試験論文1位合格者 <ロースクール既修者コースに入学、予備試験に再挑戦~これから法律学習を始める方へ 学習のポイント編>

 基礎講座ご担当の辰已専任講師・弁護士原孝至先生と2018年の予備試験論文試験を見事1位で突破した開原早紀さんとの対談の内容を3回にわたりお届けしています。本日は、第3回目(最終回)です。予備試験や法科大学院に興味がある方や法曹を目指している大学在学生の方に、学習のヒントとなるお話が盛り沢山です。ぜひご覧ください。

※対談は、2018年11月に実施したものです。

ロースクール既修コースに入学、そして予備試験に再挑戦

原 :ロースクールに進学されて、ロースクールも忙しいですよね。

 

開原:はい。

 

原 :そんな中で、今年の予備試験に向かうわけですが、予備試験の受験とロースクールの勉強の両立

  は、時として少し大変だとは思います。ロースクールに進学してからは、ロースクールの予習、復習

  と予備試験対策の勉強と、どのような配分でやっていましたか。

 

開原:ロースクールの授業予習時間は、必要最小限は確保しました。あとは、授業中に集中して吸収した

  方が復習するよりもいいと思ったので、授業と最低限の予習の時間だけは、ロースクールの勉強に集

  中して、あとの残りの時間は予備試験の短答の勉強に配分していました。

 

原 :これは、先程、条文の素読は直前期にしていたということは、4月から5月の時期になるのでしょう

  か。

 

開原:素読を始めたのは、5月に入ってからです。

 

原 :その他は問題を解きながら、という感じでしょうか。

 

開原:はい。あとは、過去問を解く際に、自分が苦手だと思う分野を書き出しておいて、直前期にその範

  囲を重点的に確認しました。

 

原 :それで、今年の予備試験を迎える。短答試験は通ると思っていましたか。

 

開原:いいえ、自信はなかったです。

 

原 :短答試験終わってから、また論文の試験に切り替えて、論文試験に向かっていくわけですよね。論

  文試験の直前期はどのようなことをやっていましたか。

 

開原:直前期はロースクールの授業もあったので、やろうと思っていた勉強の3分の1もできたかできてい

  ないのか分からないですが、最低限今までロースクール入試向けにやってきていた、「趣旨・規範ハ

  ンドブック」にまとめていた情報を各科目3周はまわして、それ以外は平日の余った時間、土日は3

  週間ぐらいかけて試験と同じ時間に過去問の答案を書いていました。

 

原 :なるほどね、そういうトレーニングをしたと。それで、論文試験を受験されて、先程聞いた素晴ら

  しい結果なのですが、受け終わったときに、手応えはありましたか。

 

開原:落ちたと思っていました。合格したとしても、スレスレかなぁと思いました。

 

原 :10月に合格発表があって、見事合格され、その後、成績が送られてきたときに、「1位」と書いて

  あって、どう思いましたか。

 

開原:1度閉じました(笑)。

 

原 :これは、毎年対談していて思うんですけれども、タイプが分かれるんですよね。「1位を狙って1

  位を取りにいきました」、という方と、「蓋を開けてみたらびっくりしました」、という方と。開原

  さんは後者の方ですね。

   それで、その後すぐに口述試験がありますよね。口述試験においては、予備試験の短答論文には出

  ない、例えば民事執行・保全法も聞かれますが、口述試験に向けては、何か特別な勉強をしました

  か。

 

開原:口述試験に向けては、2週間で準備する、という方が周りには多かったです。でも、ロースクール

  の勉強が忙しい、ということは、前期で身をもって体験していたので、論文試験に受かっていたとき

  のために、9月の頭からとりあえず、友人と過去問を口頭形式でやっていました。あと、10月の合格

  発表までに要件事実の本を2周読み込んでおいて、合格発表後から民事執行・保全法などの知識の詰

  め込みをやりました。

 

原: そのような道のりで、平成最後の予備試験を見事な成績で制したのですね。

今振り返って、最短どのくらいで合格レベルに到達できるか

原 :私は、色々な人に聞きたくて聞いていることがあります。

  「もし、あなたが法律を全く勉強していない、大学1年生の10月に戻る。知識はないが、勉強のノウ

  ハウはある。このような、今持っている勉強のノウハウだけはあるが、知識は全くない段階に戻った

  ら、最短でどのぐらいで予備試験を通る自信がありますか」。

 

開原:そうですね…最低でも2年はほしいです。確実にやれば、大学4年の予備試験は受かっていたと思

  います。

 

原 :それを踏まえて、自分がやって、あまり意味がなかった勉強はありますか。

 

開原:そうですね、これは身に付いていなかったな、という勉強はあります。

 

原 :例えば何ですか。

 

開原:1年生の10月に意味のわからないまま、市販の本を読んでいたときです。

 

原 :読んでいるから、記憶にはとどめるのだけれども、ある種暗記しようというイメージだったので

  しょうか。そうすると、理解を伴わないから、何のために知識を入れたのかがわからない、要は使え

  ない知識になってしまう、ということですね。ただ、論点みたいなものを暗記していってはいけな

  い、ということですね。

   では、これは力になった、という自分なりに良かったことはどこですか。

 

開原:私の中で良かったことは、いわゆる論点に対して、問題の所在から結論のあてはめ方の視点までが

  全部1本の線で頭の中で通っている論点にしていく、という意識をつくる、ということです。そこで

  理由付けも自分で納得しなければ、使える知識にならないので、多くの基本書で確認したことは、良

  かったと思います。

 

原 :わかりました。

これから法律学習を始める方へ

~アウトプットしながら、インプットすることが大切~

原 :それでは、そろそろ終盤の質問にいきますが、先程1年の10月に戻るならば、2年間ぐらいで予備

  試験合格できる、という話がありました。少し質問を変えます。

  「自分がやってきたことを踏まえて、予備試験、司法試験を目指す大学1年生を家庭教師するとした

  ら、何をどのように勉強させますか。」

 

開原:民法の入門をやらせます。最初は深い知識ではなくて、細かい知識は不要だから、民法全体が何を

  意識して、最初の1条から最後まで条文ができているのか、背景にある利益衡量を意識しつつ、最初

  は、軽くざっと1回流します。

 

原 :「軽くざっと流す」、薄い本でもいいから、最初は、軽く全体をまず勉強しちゃえ、ということで

  すね。これは、他の科目でも同じですか。

 

開原:はい。

 

原 :全体を見終わったら、何をやらせますか。

 

開原:全体を見終わったら、次の2周目で、少しずつやっていく幅を広げます。

 

原 :これは、合格者が共通して言うことですが、最初は、ざっと止まらずに、走れ、と。先程の話だ

  と、1年生の10月頃から答案を書くということをやっていたということだけど、これも併行してやら

  せたいですか。

 

開原:はい、書いた方がいいと思います。書ける知識が出てくるまでの深さはそれ程いらないと思うの

  で、最低限答案を書ける知識が入ったところで、答案練習はやった方がいいと思います。

 

原 :やはり、「書く」ということは大事ですよね。では、「書く」というのは、どのような効用がある

  と思いますか。

 

開原:いくつかありますが、まずは、「書ける」というのは、自分が理解している証拠になるので、自分

  が理解しているか否かを計る指針になると思います。また、書かないと、相手に伝わる文章が書ける

  のか、相手に伝わるナンバリングになっているのか、などがわからないと思います。そういう意味で

  は、早い段階で「書く」といことは必要だと思います。

 

原 :なるほどね、わかりました。勉強してきた過程を聞かせてもらうと、そういう風にやると、伸びる

  んだな、と思います。アウトプット、つまり書きながら、インプットしていく、いうのが大切です

  ね。

   それでは、最後の質問です。

  「予備試験、司法試験を含めて、法律の勉強で最も大事なことは何ですか。」

 

開原:一つに絞るならば、「条文をしっかり読むこと」です。

 

原 :やっぱり、条文から離れた勉強、議論をすることはよくない、確かに、よく言われることですね。

   本日は、とても有益なお話をありがとうございました。

※本記事は、辰已法律研究所「司法試験 原孝至・基礎講座2019年春生」パンフレットP4~P5掲載の対談について、紙面の都合上割愛した内容を追加したものです。