科目別・短答本試験直前期の底上げ策【刑事訴訟法編】

 新型コロナウイルスのために延期された令和2年司法試験及び予備試験の実施日程が決まり、辰已でも司法試験New辰已全国公開模試、予備試験・総択が実施され、短答式試験におけるご自身の現状の成績が分かってきているかと思います。そこで、本特集では、主に令和2年司法試験及び予備試験受験生を対象に、科目別に短答本試験直前期の底上げ策を紹介させて頂きます。また、現在、基礎講座受講中などで来年以降の司法試験や予備試験を目指される方にも今後の参考になるかと思いますので、是非ご覧下さい。

 なお、現在、司法試験短答式試験には、行政法、商法、民事訴訟法、刑事訴訟法はありませんが、適宜、論文式試験対策情報も掲載致しますので、司法試験受験生の方も是非お読み下さい。

【刑事訴訟法編】

 刑事訴訟法の短答式試験も、その対策に必要な知識の量が比較的少ないことなどから、試験直前期に少し対策しただけでも成績が上がりやすい科目といえます。以下、対策方法をお示しします。

 まず、刑事訴訟法の短答式試験は、手続面について条文や判例の知識を問われることが多いという特徴から、短答式試験対策に適した基本書として、以下の2つを挙げることができます。

 ① 三井誠・酒巻匡『入門刑事手続法』(有斐閣、第8版、2020)(有斐閣書籍紹介参照)

 http://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641139435?top_bookshelfspine

 ② 吉開多一・緑大輔・設楽あづさ・國井恒志『基本刑事訴訟法Ⅰ―手続理解編』(日本評論社、2020)(日本評論社書籍紹介参照)

 https://www.nippyo.co.jp/shop/book/8309.html

 従来、刑事訴訟法の短答式試験対策の教材としては、本試験過去問と上記①が主流だったといえます。条文を中心に解説されており、本特集の総論でお示しした短答式試験対策に適した基本書の4つの特徴を備えています。また、著者の三井教授と酒巻教授は考査委員経験者です。

 これに対して、上記②は、先日、本ブログの「巣ごもり学習に最適な基本書・参考書【刑事訴訟法編】」で紹介させて頂いたように、今年の4月に出版されたばかりですが、設問や図表を多用するなど内容が充実していることから、受験生の注目を集めているようです。

 そこで、上記①または②のどちらかの書籍を既にお持ちの方は、お持ちの書籍をそのまま本試験過去問を解きながら読み込まれればよいです。そして、上記①と②のどちらもお持ちでなく、模試の刑事訴訟法で低い点を取るなどして、何とか短期間で底上げを図りたい場合には、まずは①をお勧めします。確かに、②は充実した内容であり、今後出版されるであろう『基本刑事訴訟法Ⅱ―論点理解編』をも考慮すれば、近い将来、刑事訴訟法の基本書の主流になる可能性がありますし期待したいところです。ただ、通読するのにはおそらく①より時間がかかるでしょうし、①の方が条文に沿って解説しており、短答式試験対策教材としては即効性があるように思われるからです。

 また、刑事訴訟法の短答式試験対策としては、刑事手続の流れを把握することが非常に重要です。それには、上記①の284頁の次に綴じられている「刑事手続の流れ」や54頁の「逮捕・拘留の全体状況(勾留再延長の場合を除く)」や、上記②の目次の前頁の「本書の構成」などを参照されるとよいでしょう。

 なお、最後に司法試験論文式試験に関する情報を付させて頂きますが、近時、本来短答式試験プロパーの知識と思われる公判前整理手続に関連した出題がなされていますが(平成28年司法試験論文式試験刑事系科目第2問設問4、令和元年司法試験論文式試験刑事系科目第2問設問2)、双方の本試験過去問とも判例(裁判例)を素材としています。これに対応するためには、直前期に公判前整理手続に関する判例を判例百選などで確認されるとよいでしょう。さらに、もし可能であれば、川出敏裕『判例講座 刑事訴訟法〔公訴提起・公判・裁判篇〕』(立花書房、2018)P.155~175「第9講 公判前整理手続⑴―手続の概要・証拠開示」、同P.177~190「第10講 公判前整理手続⑵―その後の公判手続」を一読されるとよいでしょう。双方の本試験過去問の素材判例(裁判例)なども詳しく解説されているからです。