科目別・短答本試験直前期の底上げ策【行政法編】

 新型コロナウイルスのために延期された令和2年司法試験及び予備試験の実施日程が決まり、辰已でも司法試験New辰已全国公開模試、予備試験・総択が実施され、短答式試験におけるご自身の現状の成績が分かってきているかと思います。そこで、本特集では、主に令和2年司法試験及び予備試験受験生を対象に、科目別に短答本試験直前期の底上げ策を紹介させて頂きます。また、現在、基礎講座受講中などで来年以降の司法試験や予備試験を目指される方にも今後の参考になるかと思いますので、是非ご覧下さい。

 なお、現在、司法試験短答式試験には、行政法、商法、民事訴訟法、刑事訴訟法はありませんが、適宜、論文式試験対策情報も掲載いたしますので、司法試験受験生の方も是非お読み下さい。

【行政法編】

 令和元年予備試験短答式試験行政法の平均点は12.1で、法律科目7科目の中で最低であり、行政法はなかなか点が取り難い科目といえます。これは、旧司法試験の科目に行政法がなく、また、基礎講座などでも学習の便宜上、憲法、民法、民事訴訟法などの後に行政法が開講され、どうしても対策を始めるのが遅くなってしまうなどの要因が考えられます。しかし、他の科目と同様、短答式試験対策の軸となるのは本試験過去問と短答式試験対策に適した基本書となるかと思います。

 現在、行政法の基本書としては、設問や図表を多用し、その分かりやすい内容から、中原茂樹『基本行政法』(日本評論社、第3版、2018)(以下「基本行政法」という。)が受験生に人気です。同書は非常に情報量も多く、短答式試験対策にも適しているので、既に同書を使用されている方は、同書と本試験過去問で最終調整をされればよいと思います。

 もっとも、基本行政法などの行政法の基本書をお持ちでない方で、本試験過去問の他に何らかの基本書を使って底上げを図りたい場合には、本特集の総論でお示しした短答式試験対策に適した基本書の4つの特徴を最も備えた基本書として、櫻井敬子・橋本博之『行政法』(弘文堂、第6版、2019)(以下「櫻井・橋本」という。)をお薦めします。

 確かに、基本行政法は、設問を多く用いて分かりやすく、その上、元考査委員の著者が「終章 事案解決の着眼点」(同書P.456~459)で、実質的に司法試験などの論文問題の解き方を指南しており、論文式試験対策までを見据えれば非常に有益な基本書です。ただ、設問を多く用いた基本書の場合、初めて読んで理解するのには比較的時間が掛かるため、条文、制度趣旨、判例などを端的に解説している櫻井・橋本の方が、より短答式試験対策向けかと思われます。

 ただ、行政法の短答式試験対策に必要な知識は多く、行政救済法に関しては、ある程度論文対策で学習済みという場合には、手薄になりがちな行政法総論と行政作用法(櫻井・橋本P.1~228)だけを確認するという方法もあります。もっとも、行政救済法の中でも行政不服審査法(櫻井・橋本P.229~241)については、近年改正されていることから、しっかり確認しておいた方がよいでしょう。

 なお、下記の弘文堂HPで、櫻井・橋本の関連書籍である橋本博之『行政法判例ノート』(弘文堂、第3版、2013)の補遺が掲載されています。これは、短答・論文双方に役立つ資料ですので、是非、閲覧されるとよいでしょう。

https://www.koubundou.co.jp/book/b156216.html

 また、近年改正された行政不服審査法に関しては、下記の総務省HP掲載のリーフレットがイメージを掴みやすいので、参照されるとよいでしょう。

http://www.soumu.go.jp/main_content/000406934.pdf